IoTで広がるビジネスチャンス、愛知県に見る地方発ベンチャーの育て方モノづくり×ベンチャー インタビュー(4)(2/3 ページ)

» 2015年06月23日 09時00分 公開
[陰山遼将MONOist]

「卒業生」は80社以上!

 あいちベンチャーハウスの支援を受け、独立していった「卒業生」となる企業の数は80社を超える。そのうちの約6割以上が愛知県内に定着しており、卒業企業の中には数億円規模の売上高を維持している企業も多い。

 またこれまではITサービスを手掛けるベンチャー企業の育成が多かったが、今後はIoT市場の拡大やロボット産業の盛り上がりを受け、モノづくりに取り組む企業の育成や誘致にも注力していく方針だという。その狙いやベンチャー企業の育成について、これまであいちベンチャーハウスのIMとして多くの企業をサポートしてきた中野喜之氏に聞いた。

あいちベンチャーハウスのIMを務める中野氏

MONOist 昨今、新たなベンチャーブームとも呼べる状況が訪れていますが、その背景で消えていく企業も多い。多くの企業を育成してきたIMの視点から見て、ベンチャー企業の育成にはどういったポイントがあるのでしょうか。

中野氏 やっぱりお金ですね。事業を立ち上げる時に、最初にお金もしくは顧客を持っていないとなかなかやっていけない。入居を希望する企業には、最低でもまず1年活動するために300万円は用意しましょうと伝えています。そうでないとやはり入居しても、なかなか事業が続かない。こうした部分も入居審査の項目になっています。どうしてもお金がないという場合は、まず自宅で始めてはどうかという提案もしますね。

 次はやはり人の問題です。例えば3人それぞれが資金を持ち寄って、全員が取締役になるベンチャー企業があったとします。この場合は最後に誰か1人が残るか、全員消えてしまうという場合が多いんです。やはり最初は社長を1人に決めて、事業方針などの決定権が誰にあるのかを明確にすることが重要です。そうすれば社長が状況に応じて経営方針を変えていけるので。

MONOist あいちベンチャーハウスへの入居期限は原則3年、最長5年となっています。これがベンチャー企業の事業を見極める1つの目安となるのでしょうか。

中野氏 特にIT系の場合だと、3年やってみてダメだったら事業継続は難しいと思います。勝負の流れの変化がとても速い業界です。なので状況を見ながら途中で新しいビジネスプランを作るなどして、細かく事業を修正していくのは大切です。ですからまずは3年、そして事業の状況を見て1年ごとに最大5年まで延長できるシステムにしています。

 あいちベンチャーハウスではIMが常駐しているので、相談をいつでも受けられます。大手企業とのマッチングや、仕事があった場合には入居企業に紹介するといったサポートも行っています。

 1人で事業を立ち上げた入居企業にはいつも、とにかく従業員を1人でも2人でも増やすことを目標にしようと伝えています。今1人で食べていけたとしても、50代になったときにどうするのかという問題があります。やはり従業員を増やして、しっかりと事業をスケールアップさせていくということを念頭に置いて欲しいという考えです。

MONOist モノづくりに特化したベンチャー企業にフォーカスする理由について教えてください。

中野氏 あいちベンチャーハウスでは、株式の新規公開(IPO)を行う企業を育成するという2015年度目標を掲げています。これまではITサービスを手掛ける企業を中心に育成していきました。しかしIoTという言葉が出てきているように、ITがモノづくりなどさまざまな領域にも及んできている。それをもっと盛り上げて、愛知県から旬なベンチャー企業を輩出していきたいと考えています。

 これまでモノづくりに取り組む入居希望企業はなかなか出てきませんでした。でも愛知県内にはさまざまなモノづくりの支援施設がありますし、地元の中小企業でも何か新しいことをしたいと考えている方も多い。さらに愛知県としても「次世代産業」としてIoTやロボットなどの新産業に注力しています。あいちベンチャーハウスを通してこうした施設や企業と連携していけば、製品化や量産も十分可能だと考えています。

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