鯖江から世界に飛び出す“かっこいい老眼鏡”、自社ブランドで起こした革新のカギ【前編】zenmono通信(2/3 ページ)

» 2015年06月18日 09時00分 公開
[zenmono/MONOist]

Webサイトを立ち上げて5年で売上が2.5倍に

enmono 自社のWebサイトを立ち上げて、今までと全然関係ない顧客から初めて部品を受注できた時、どう思いました?

西村氏 当時、自分たちの加工技術が、眼鏡以外の分野でどういう風にお手伝いできるかというのは実際よく分かっていませんでした。ですから、とにかく情報発信してみようということで、自分たちの強みは何かと分析しながらWebサイトを作りました。チタン加工が得意なので、特定の分野の顧客に対しては自分たちの技術が生かせる部分があるかなと、いろいろチャレンジして自社の技術もどんどん上げていきました。その中でこの医療関係や半導体、航空機の部品など本当に日本全国、業種業界を問わず仕事をさせていただくことになりました。

 眼鏡部品の製造が100%だった当時は、業界の波にすごく影響されるわけですよね。

西村金属が手掛ける主なチタン加工製品

enmono 1つの業界の動きに業績が左右されるリスクを、受注先を分散することで少なくしていったわけですね。

西村氏 そう、分散したかったんです。眼鏡産業というのはいわゆる斜陽産業で、生産加工はどんどん海外にシフトしてしまったので。

enmono その動きはいつごろからですか?

西村 2000〜2003年にかけて、眼鏡フレームの製造が海外に行きました。それで鯖江に仕事がなくなってしまった。それだったら眼鏡以外の仕事を取っていかないと、継続的な発展ができない。そこで選んだのがインターネットだったわけです。

enmono 2000年頃というのは早いですね。その当時ってB2Cはあったかもしれないけど、B2Bがネットでっていうのはなかなかないのでは?

西村氏 なかったですね。Webサイトは2003年に作成しましたが、当時はB2Cの販売がようやくインターネットを通した販売に慣れてくるような段階で、B2Bでは「われわれの技術という形のないものはインターネットでは売れない、顔合わせてなんぼや」という風に言われるのが常識でした。

enmono Webサイトの実績をみると、サイト上からの問い合わせ件数が40〜60件とありますが、これは企業からのものですか?

Webサイトの実績

西村氏 はい。大手メーカーの開発担当の方や工場担当の方ですね。今でも毎日新規のお問い合わせをいただいておりますし、今インターネット上ではチタン加工といえば西村金属というブランドは出来あがっているんじゃないかなと。

enmono うん、そう思いますね

西村氏 その流れでこの売上高の推移なんですけど。

enmono 公開しちゃっていいんですか?(笑)。

売上高の推移

西村氏 いいですよ(笑)。横軸が年度ですね。2012年までしかないのでちょっとデータが古いんですけど。2000年から2003年にかけて売上が半減していくわけです。で、ここからWebサイトを通じての新規開拓の取り組みを開始して、約5年で売上が2.5倍に増えたんです。

enmono 社員さんも増やしたんですか?

西村氏 はい。それが2010年のリーマンショックの時です。リーマンショックも落ち込みは少なくてすみました。それはやっぱり事業を分散したからというのが大きかったと思います。そしてリーマンショック以降にまたグッと売り上げが伸びていってます。

enmono 2006〜2009年にかけての伸びがすごいですね。

西村氏 こういう取り組みをしてきて、おかげさまで2007年は日経新聞の「日経ものづくり大賞」、経済産業省の「元気なモノ作り中小企業300社」「IT経営力大賞」などいろいろな賞をいただきました。

でも1社では限界……地域ブランドを発足!

西村氏: でもリーマンショックの時期、2008〜2009年くらいに、1社でやることの限界を感じました。そこで異なる技術を持った何社かが共同受注することでスケールメリットを得て、さらに地域の強み・特色を生かしていこうと考えて、今でいう地域ブランドを作りました。それが「チタンクリエイター福井」です。


enmono 展示会もかなり力が入ってましたね。すごい印象に残ってるんですよ。

西村氏 ありがとうございます。印象に残るってすごく大事だと思いますね。そこで自分たちの技術をどうPRしてどう相手の記憶に残すか。B2Bっていうのは困った時にしかニーズが生まれないわけです。どこかが「チタンの加工に困ったな」という時をわれわれは待つしかない。そうした時に、「チタンクリエイター福井、西村金属があるね」と、いかに早く思い出してもらえるか、ということにチャレンジしてきました。

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