ジェイテクトがラックアシスト式EPSに注力するのには理由がある。今後のEPS市場で最も成長するとみられているのが中型車〜大型車向けだからだ。
EPSの採用比率が80%以上になる国内市場では、Dセグメントの一部車両にもC-EPSが採用されるなどC-EPSが広く採用されている。これとは全く異なるのが、北米と欧州市場である。Bセグメント以下では、C-EPSを採用しているものの、Cセグメント以上の車両のEPSはラックアシスト式EPSが基本であり、Dセグメント以上の車両や操舵性能が要求されるSUVではRP-EPSが広く用いられているのだ。
世界全体で拡大する自動車市場と同様に、Dセグメント以上の車両も市場拡大傾向にある。現時点では、EPSではなく油圧式パワーステアリングを採用する車両の方が多いものの、今後は油圧式ステアリングからDP-EPSやRP-EPSへの切り替えが進むと予測されている。村田氏は、「特に北米市場は、大型車の温室効果ガス排出量規制に合わせた燃費基準の厳格化によって、油圧式パワーステアリングよりも燃費に有利なEPSの採用が増えるのは確実。従来は、油圧式パワーステアリングが当たり前だったピックアップトラックでも、フォードの『F-150』がEPSを採用する事例などが出ている」と強調する。
この拡大する中型車〜大型車向けEPS市場を攻略するために開発されたのが、同社のRP-EPSというわけだ。現在も強いC-EPSに加えて、DP-EPSの展開拡大、RP-EPSの新規投入により、EPSの全市場をカバーする。
ジェイテクトは、C-EPSがステアリングの上側=上流でアシストすることから上流アシスト、ラックアシスト式EPSがステアリングの下側でアシストすることから下流アシストと呼んでいる。同社がEPSで世界トップシェアを維持するためには、下流アシスト製品の成長拡大は不可欠だ。これが「上流から下流へ」向かう同社のEPS事業の戦略になるわけだ。
なお、受注活動の結果から、2018年時点の同社の世界シェアは、DP-EPSが現在の19.9%から26.0%に、RP-EPSが3.3%から11.2%に成長する見通し。EPSの世界シェアも、現在の31%から34%まで拡大するとしている。
次回の後編では、ジェイテクトのEPSの開発を支える体制について紹介する。
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