中国市場で勢いを見せつけるフォルクスワーゲン、グループ内抗争の影響は軽微上海モーターショー2015 リポート(2/3 ページ)

» 2015年05月20日 09時00分 公開
[川端由美MONOist]

目玉は「CクーペGTE」「シロッコGTS」「グランサンタナ」

 話をグループナイトに戻そう。今回登場した車両のうち、目玉となるのは「CクーペGTE」「シロッコGTS」「グランサンタナ」の3車種だ。

 「Cクーペ GTE」は、中国で「パサートCC」の人気が高いことに加えて、近年、上海のような一級都市で電動化を推進する規制が進められていることから着想されたと思われるモデルだ。フォルクスワーゲンブランドの旗艦モデルである「フェートン」に続く高級セダンの位置付けであり、全長約5mと立派な体格である。実際に見てみた感覚からはAudi(アウディ)ブランドの「A7」くらいはあろうかと思える。搭載されるパワートレインは、最高出力210ps(154kW)を生む直列3気筒エンジンのTSIユニットに、最大出力91kWのモーターを組み合わせたプラグインハイブリッド機構は、システム全体で最高出力245ps(180kW)/最大トルク500Nmを発揮する。容量が14.1kWhのバッテリーを搭載しており、走行距離で50km、最高時速で130kmまでのEV走行が可能だ。NEDC(New European Driving Cycle:新欧州ドライビングサイクル)モードでの燃費は2.3l(リットル)/100kmをマークする。エンジン利用を含めた走行距離も800kmのロングレンジを誇る。

「Cクーペ GTE」を紹介するフォルクスワーゲンブランドの技術担当役員であるハインツ・ヤコブ・ノイサー氏 「Cクーペ GTE」を紹介するフォルクスワーゲンブランドの技術担当役員であるハインツ・ヤコブ・ノイサー氏(クリックで拡大) 出典:フォルクスワーゲン

 一方の「シロッコGTS」は、1980年代に発売された初代モデルからインスパイアされた車両だ。最上級のスポーツ仕様である「シロッコR」と、ベーシックモデルの間を埋める位置付けになる。パワートレインは、最高出力220ps(162kW)を生む排気量2l直列4気筒TSIのターボ付きユニットに6速MTまたは6速DSGが組み合わされる。エクステリアは18インチの大径ホイールとエアロパーツでドレスアップされており、インテリアもステンレス製ペダルやスポーツステアリングホイールなど、スポーティな雰囲気が演出されている。

「シロッコGTS」の外観(左)と内装(右)(クリックで拡大) 出典:フォルクスワーゲン

 これらの2車種については事前にアナウンスがあったものの、「グランサンタナ」は全くのサプライズ発表だった。「サンタナ」は中国市場におけるロングセラーモデルであり、2014年までに累計460万台を超える販売を重ねてきた大ヒット作。今回発表された「グランサンタナ」は、鮮やかなオレンジ色のハッチバックボディを纏う若々しいデザインだ。地味めな外観でコツコツと販売を続けてきた「サンタナ」に対して、若いユーザーの獲得を狙う。パワートレインは、おなじみの排気量1.4lのTSIユニットと7速DSGを搭載する。

「グランサンタナ」の外観 「グランサンタナ」の外観(クリックで拡大) 出典:フォルクスワーゲン

 ワールドプレミアではないが、フォルクスワーゲンブランドの「ゴルフGTE」、ポルシェブランドの「パナメーラS eハイブリッド」、アウディブランドの「A3 eトロン」といったグループ内のプラグインハイブリッド車を並べて、中国担当役員であるハイツマン氏がスピーチしたのも印象的だった。フォルクスワーゲンは中国に寄り添っており、中国での雇用を増やし、中国の発展のためにともに歩むという趣旨の内容であり、電気自動車やプラグインハイブリッド車を「新エネルギー車」として推進する中国政府に対するアピールでもあるだろう。

中国担当役員のヨッヘン・ハイツマン氏がフォルクスワーゲングループのプラグインハイブリッド車を紹介 中国担当役員のヨッヘン・ハイツマン氏がフォルクスワーゲングループのプラグインハイブリッド車を紹介。左から「パナメーラS eハイブリッド」、「ゴルフGTE」、「A3 eトロン」(クリックで拡大)

 現状、広州などの特例を敷く市をのぞいて、一級都市と言われる上海や北京では、パナメーラはEV走行の距離が短く新エネルギー車の対象にはなっていないが、ポルシェの技術担当役員であるハッツ氏によれば、近々、パナメーラS eハイブリッドのEV走行距離を中国の規制に適合させるアップデートを行う予定だという。

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