CAEの最新動向を有力ベンダーに聞く短期連載。第1回は、オープンソースの流体解析ツール「OpenFOAM」を使った解析やサポートに10年以上の経験を持つCAEソリューションズに、その現状について聞いた。
流体解析ツールといえば有名ベンダーが提供する高価なものというイメージを持つ読者は多いだろう。しかし、オープンソースベースで開発されてきた解析ソフトの性能はかなり向上し、国内外の企業の研究部門などを中心にユーザーも増えているという。
オープンソースの流体解析ツール「OpenFOAM」に早くから着目して、サポートや受託開発に10年以上取り組んできたCAEソリューションズのPLM事業部 部長 吉野孝氏に、その特徴や実力、メリット、国内外の現状について聞いた。
OpenFOAMは、英国インペリアルカレッジの学生が1989年に開発をスタートした流体解析ツールで、それまで一般的だったFORTRANやCではなく、オブジェクト指向言語であるC++で記述されていることから、開発効率やメンテナンス性に優れるといった特徴を持っている。2004年に開発者らがOpenCFDを立ち上げ、ソフト名をOpenFOAMにするとともにオープンソース化した。2012年には米ESIがOpenCFDを買収し、OpenFOAMは同社の登録商標となったが、OpenFOAMの開発はGNU GPLに従って現在もオープンソースベースで行われている。
MONOist OpenFOAMが注目されているということですが、そのきっかけは?
吉野氏 まず、2004年のオープンソース化を機に、それまではなかった、オープンソースでちゃんとした流体解析ができるソフトとして注目されました。次に注目されたのは2009年のリーマンショック後(の景気後退時)。流体解析は大規模化する場合が多く並列計算が必須といえますが、商用ツールの基本的なライセンス形態ではコア数に応じてライセンス料が高くなっていくため、PCクラスタを使って並列計算をしようとすると高価になってしまい、企業にとってはコスト的に大きなネックになります。そこでライセンス料が発生しないOpenFOAMへの注目度が非常に高まりました。
MONOist オープンソースツールに対して、ずっとベンダーのソフトを使ってきたユーザーの中には本当に使えるものなのか、不安に思う方もいらっしゃると思います。
吉野氏 OpenFOAMの特徴として、大規模並列計算の効率の高さがあり、スピードに関しては申し分ないと考えています。もう1つ、商用ツールに比べて計算のソルバーの種類が豊富なことも挙げられます。OpenFOAMでは、1つの物理モデルに対して1つのソルバーという形になっていて、多数のソルバーをユーザーが選択して利用できます。その性能も商用ツールのレベルをクリアしています。
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