今回のレビューで、うでみさんが驚いていたことは、「プロトタイプは実寸(1分の1スケール)で作るのか!?」という、こちらもビックリしてしまうような“純粋”な気付きでした。製品開発に携わった経験がなくても、イラストに下書きするようにスケッチをして清書し、デジタル化して設計する……というイメージは付くようですが、プロトタイプについては、そもそも何のために作るのか? ということを確認しながら進めてきました(連載第2回、第3回の記事参照)。
しかし、プロトタイプには段階によって確認したい内容が異なり、それによって試作する方法も異なる場合があります。例えば、机に置いたときのサイズ感を見てみたい場合は、単に上から見た状態でよければ、実寸の断面形状を紙に印刷して置いてみるだけでも、周囲の環境とのサイズ比較は可能です。あるいは、重さを確認したい場合は、同じ重さの粘土を持ってみたり、既存製品に重りを足して同じ重さにしてみたりするだけでも検証は可能です。
3Dプリンタなどのデジタル工作機械を使ったMAKERSたちのモノづくりの場合、すぐに3Dプリンタで試作することはできますが、どの段階で3Dプリントのプロトタイプが必要なのか? という視点を持つことで、より早い段階で簡単な検証をすることもできます。
今回の「『ゆ』のみ」の場合、全体の形状を確認するために3Dプリントでの検証を採用してきましたが、あるとき、うでみさんはこんな失敗をしてしまいました。
実は、うでみさん、プロトタイプを3Dプリントするのに毎回数時間かかるのが待ち切れずに、「デザインだけを確認するのだからサイズが小さくてもよいはずだ!」と考え、実物の5分の1くらいの小さなモデルを出力してみたのです。結果は惨敗……。壁もひょろひょろで形状がうまく再現できていない、とても残念で、とても小さなプロトタイプが出力されたのでした。なぜこんなことになってしまったのでしょうか? 理由は簡単で、単純にモデルをスケールダウンしてしまったからでした。そのため、モデルの壁部分の厚さも造形不可能なほど薄くなってしまい……。結果、ひょろひょろになってしまったのでした。今回のうでみさんのように、小さく出力してデザインを確認したければ、スケールダウン後のサイズでも3Dプリンタできちんと造形できるのか、気を配らなくてはなりません。
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