打ち上げからこれまでの4カ月で、ノミナルミッションはほぼ達成。ロケットからの分離後、太陽電池パドルは正常に展開し、想定通りの発電量が得られている。機体各部の温度も想定の範囲内。3軸姿勢制御が確立できており、現在、探査機の生存に問題は無い。
深宇宙における通信にも成功。現在、主に使っているのはローゲインアンテナとのことだが、ミドルゲインアンテナでの通信も実施した。なお地上局は、臼田と内之浦にあるJAXAの大型パラボラアンテナが使われているとのことだ。
一方、推進系では、2015年2月末より軌道制御を実施。これまでに累計223時間という長時間、イオンエンジンの運転を実施することができた。地上からの計測で、推力は366μNと推定。これは、スペック(300μN)を上回る数字である。
ただしイオンエンジン(軌道制御用)とコールドガスジェットスラスタ(姿勢制御用)を統合した推進系「I-COUPS」は定常運用の前に、(1)調圧制御ソフトウェアの不具合による流量異常、(2)中和器電圧の異常上昇、といった問題も発生していた。
上記(1)の問題は、ソフトウェアのバグが原因と特定されている。I-COUPSは、超小型衛星「ほどよし4号」に搭載されたイオンエンジン「MIPS」に、姿勢制御スラスタ(RCS)を追加した構成。RCSはリアクションホイールのアンローディングに欠かせないが、燃料のキセノンを共通化することで、小型軽量化が図られている(関連記事:「超小型衛星の世界を変える!!」――世界最小クラスのイオンエンジン「MIPS」 )。
この不具合は、MIPSとRCSを同時に動かすときのみに発生するという。地上試験では、MIPSとRCSは個別に動作確認をしており、同時運転を行わなかったため、この問題を見つけることができなかったのだ。
これはI-COUPS内部の制御ソフトのバグなのだが、この部分については、軌道上でアップデートすることができない。しかし、その上位にある探査機のメイン計算機(OBC)については、柔軟な再構成が可能となっているため、調圧機能の一部をOBC側に持たせることで、この問題を解決した。
少々厄介なのが(2)の問題だ。これは、ほどよし4号でも地上試験でも現れなかった現象で、まだ原因が特定できていないが、キセノンの流量を増やすことで、状態が改善されることが分かった。これにより、イオンエンジンの燃費は少し悪くなってしまうものの、もともと燃料の消費はRCSの方が多いくらいなので、燃料不足になることはないそうだ。
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