「未来医XPO’15」の日本薬剤師会のブースで紹介されていた電子お薬手帳「e-お薬手帳」は、東日本大震災をきっかけに大阪府薬剤師会が発案したものだ。
病院で処方してもらった薬を薬局でもらうときに使う「お薬手帳」。このお薬手帳、急に風邪をひいたりしたときなどには持っておらず、毎回新しく発行してもらっているような人も多いかもしれない。
このお薬手帳を電子化する取り組みが進んでいる。「未来医XPO’15」(2015年3月28日〜4月5日、神戸国際展示場)の日本薬剤師会のブースでは「e-お薬手帳」が紹介されていた。
e-お薬手帳では、スマートフォンのアプリと、薬局から提供される薬の情報をまとめたQRコードを使って、自身がそれまでに処方された薬の履歴を一括管理することができる。
このe-お薬手帳の導入で先駆けたのが大阪府薬剤師会だ。そのきっかけになったのは2011年3月11日の東日本大震災だ。多くの避難者が服用中の薬を必要としたものの、被災時にお薬手帳を持ち出せなかったため薬を特定できず、処方するまでに多くの時間を要するという問題が起きた。「避難時にはお薬手帳を持ち出すところまで気が回らない。しかし、携帯電話機やスマートフォンであれば必ず持ち出す。そこで、スマートフォンアプリとして、e-お薬手帳を導入することにした」(説明員)という。
現在は、大阪府薬剤師会の他、京都府や高知県の薬剤師会もe-お薬手帳を導入している。この他、滋賀県や川崎市、横浜市などでも、ソニーの電子お薬手帳「harmo」が利用できるようになっている。日本薬剤師会としても、お薬手帳の電子化を促進する方針を決めている。
ただし電子お薬手帳では、地域によって導入しているシステムが異なる場合、各ユーザーが情報を一括管理できなくなるおそれがあるという指摘がある。e-お薬手帳では、薬に関する情報をまとめたQRコードを、電子お薬手帳のデータフォーマット仕様であるJAHISに準拠させることで対応している。
現時点の法制面で電子お薬手帳は、携帯し忘れたり紛失したりしがちなお薬手帳をサポートする役割にすぎない。今後導入が広がっていけば、事実上、電子お薬手帳がメインのお薬手帳になるのかもしれない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.