当たり前のように使われている鉛フリーはんだだが、まだ課題は多い。その鉛フリーはんだをテーマとする「第44回インターネプコン ジャパン」の専門技術セミナーに3人の専門家が登壇。本連載では、その講演内容をリポートする。第3回は、日本スペリア社 R&Dセンター センター長の不可三拓郎氏による「鉛フリーはんだによる高信頼性アルミ接合技術」だ。
最新の製造技術・実装技術の展示会「第44回インターネプコン ジャパン」(2015年1月14〜16日、東京ビッグサイト)の開催3日目に当たる1月16日、鉛フリーはんだをテーマとする専門技術セミナーが開催された。本連載では、同セミナーに登壇した3人の鉛フリーはんだの専門家の講演内容をリポートする。
第3回は、日本スペリア社 R&Dセンター センター長の不可三拓郎氏による、「鉛フリーはんだによる高信頼性アルミ接合技術」と題した講演の内容を紹介する。
このところ、銅に替わる導通用材料として、軽量で安価なアルミニウムが注目されており、一部は既に実用化されている。不可三氏には、「車載分野などでは、燃費向上のために軽量化が求められており、金属材料のアルミニウム化を進めたいという流れがある。それは車体材料だけでなく、モーターのコイル線やワイヤーハーネスも含まれている。さらに、アルミニウム部材接合部について、カシメからはんだ付けへの工程変更、さらにアルミ放熱材量(ヒートシンク)の直接はんだ付けなどの取り組みも進んでいる」と語る。
アルミニウム化のメリットは、軽量化と低コスト化の同時実現である。重さは同じ体積であればアルミニウムは銅の3分の1、価格も同じく3分の1程度だ。
一方でデメリットもある。銅と比べて強度が下がり、多数あるアルミニウム合金の選定が必要となる他、同じ線径では抵抗が高く抵抗値のバランスを考えなければならない。低圧線には不向きで、抵抗が高いので細線にも向いていない。また、アルミニウム特有の酸化膜の影響があり、接合が難しく手間がかかる。さらに、ガルバニック腐食(後述)の懸念により信頼性も劣る。アルミニウム化は魅力的ではあるが、「作業性や信頼性を考えると本当に安くつくのか」という声が上がっているという。
アルミニウムのはんだ付けは、銅母体よりも難しい。アルミニウムは安定した酸化膜を形成するため、活性の強いフラックスを用いたり、超音波で物理的に酸化膜を除去したりした上で、めっき加工によってぬれ性を確保することが必要。ただし、めっきは工数やコストを考えると導入が難しくなる可能性が高い。
ガルバニック腐食とは、アルミニウムとスズ、アルミニウムと銅など、大きく酸化還元電位が大きく異なる金属の接触によって腐食が進むことだ。接触した金属間の電位差が駆動力となってしまう。この腐食について不可三氏は、「高活性のフラックスが残らないように洗浄するか、フラックスを使わず超音波で直接付けてしまう方法がある。また、アルミニウム接合用のはんだの使用も検討すべきだ。腐食が起こる必要条件の1つである電解質が入らないように、はんだ付けの後、接合部を樹脂などでコーティングする取り組みも行われている」とさまざまな対策を提案した。
日本スペリア社のアルミニウム接合用はんだ「ALUSAC-35」は、従来のすず亜鉛を含む鉛フリーはんだと比較して、良好な耐食性を示している。この良好な耐食性によって、コーティングや水を遮断する工定などを減らせる可能性がある。同社は、今後もALUSAC-35が耐食性に良好な理由を、電気化学的手法を用いて引き続き解明を進めていく方針。また、エイジング後の抵抗値など、懸念される物性値を確認する必要性も指摘している。
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