障害者と健常者が共に働くパナソニック コネクト吉備は、グループの事業転換の影響を受けながらも、リスキリングで得た技術で新たな挑戦に取り組んでいる。同社が進めている具体的な活動内容を紹介する。
近年、障害者の勤労意欲は高まっており、官民が連携してさまざまな施策が行われている。そして、ITをはじめとする技術の進展は、障害がある人々の可能性をも広げている。グループの事業転換の影響を受けながらも、リスキリングで得た技術で新たな挑戦に取り組んでいる、パナソニック コネクト吉備の現場改革事例を紹介する。
岡山県吉備中央町にあるパナソニック コネクト吉備は、1980年に障害者の雇用促進が目的の特例子会社として吉備松下の名で設立された。日本で初めての第三セクター方式の重度障害者雇用事業所となっており、パナソニックの他、岡山県や吉備中央町も出資している。日本で2番目の第三セクター方式の重度障害者雇用事業所は、1981年に設立されたパナソニック コネクト交野(当時は交野松下)だ。
パナソニック コネクト吉備では下肢や聴覚、内部、知的、精神に障害がある38人と健常者41人を合わせて79人が働く(2025年3月時点)。非常用放送機器やプロ向けAV機器などのB to B機器の製造を、部材の入庫管理からユニット組み立て、本体組み立て、調整/検査、外観検査、包装/出荷まで一貫して行っている。また、新製品のRoHS検査も受託している。
開設当初は、据え置き型のVTRなどを製造していたパナソニック岡山工場(岡山県岡山市)向けにプリント基板を製作していた。2000年代に入ると自動化技術の進展で、カメラ機器の組み立てもできるようになった。しかし、「業務用AV機器事業の強化に向けた改革の一環」として、2020年に岡山工場の閉鎖が発表された。
パナソニック コネクト吉備 社長の中村博文氏は「閉鎖の影響は大きかった。それまで岡山工場が材料の供給、工程の設計、品質の維持などを担っており、大きく依存していた。その岡山工場がなくなったことで、これらを全て自分たちで担わなければならなくなった」と語る。
そこで、2022年からスタートしたのが、アプリケーション開発などを行うITオペレーション/サービス事業だ。ただ、従業員がもともとそういった技術を持っていたわけではない。通信教育などを活用してリスキリングを行った。
「最近はローコードアプリが発達しており、以前のようにプロコード(高度なプログラミング)のスキルを身に付けなくてもソフトウェアの開発が可能である。また、通信教育であれば、理解できるまで何度も繰り返し学習でき、自分のペースで進められる。この通信教育という学習スタイルは、彼らに非常に適していた」(中村氏)
やがて、パナソニック コネクトの営業支援用タスク管理システムなどの設計、開発の他、システムの運用や社内研修の支援、動画編集なども業務として受けるようになった。
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