それでは、それぞれのサービス品質評価の内容についてコールセンターを例にして見ていきましょう。
コールセンター業務を考えた場合、コールセンターと連絡を取るために必要な機器など、手段が整備されているかということです。IoTの活用をこれに当てはめた場合、従来は電話などで行っていたメーカーサイドとのやりとりを、各種センサーと通信機器が代替していくことだといえます。
保有あるいは発信する情報が正確なものであるかということを示します。カスタマー登録しているにもかかわらず、コールセンターに問合せたら使用機器モデルと異なる機器の情報が出てきたり、サービスマンが約束の時間に来なかったり、ということではこの「正確性」に問題があると判断できます。
どれだけ顧客要望に迅速かつ柔軟に対応しているかというものです。マニュアル通りのガチガチの対応でそれ以外に対応できないとう状況では、CSを下げてしまいます。例えば、ある靴の通販会社ではコールセンターのオペレーターが、自社が扱っていない商品に関する問合せに対して取扱店などを調べて教えてあげたことで、その顧客をファンにしてしまったというエピソードもあります。
サービスを遂行するに当たっての必要な知識、技能の保有状況です。直接電話口で対応してくれるオペレーターの能力もさることながら、オペレーターに何を教育すべきか、どのようなインフラを用意すべきかを考えるスタッフ陣の能力も問われるところです。
接客対応の礼儀正しさ、立ち居振る舞いのことです。製品故障の問題がすぐに解決しなかったとしても、好感度が高ければ顧客側の不満が和らぐという効果があります。24時間対応のコールセンターであえて女性オペレーターを配置するところが多いのも、顧客からのクレーム電話に対して顧客の怒りを抑える防波堤としている面もあるといえるでしょう。
ここに連絡をとればきちんとした対応をしてくれるという印象を与えているかということです。顧客サイドからの問合せに対してテキパキと過不足なく必要な対応をしていれば自然に信用性は高まってきます。
コールセンターに何の心配もなく電話をかけることができるかということを示します。個人情報が漏れる心配や対応が不満足なものであれば、顧客は電話するのに躊躇(ちゅうちょ)します。IoTを用いたサービスビジネスの展開を考えた場合、このポイントは注意が必要な部分になります。設備の稼働状況、稼働率などは他社に知られたくない部分です。サービスビジネスに必須の「安心感」を作り出すためには、「セキュリティの強化が必要だ」というロジックを立てることができます。
サービスの提供元とのコンタクトのし易さになります。コールセンターに電話をしてもなかなかつながらず、こちらの要望を伝えることする出来なかったという経験は誰にでもあると思います。顧客から到達できなかった場合、顧客の不満は解消されることはなく、そのまま満足度の低下につながります。
顧客の要求を正しく理解し、かつ顧客が理解できるような言葉遣い、表現で説明し相互理解を深めているかということです。メーカーサイドからみれば日常頻繁に使う一般用語であっても顧客にとっては理解できないものであるかもしれません。
著者の母は70歳を過ぎてPCを習い始めたときに戸惑っていたのは、インストラクターの使う用語が分からないというものでした。例えば、「クリック」といわれても何のことか全く分からず「海外の人と話をしている状態だった」と話しています。高齢化社会が到来する中、新しい概念が年配の方に通じずアイデアが活用されないということもあり得ます。IoTを活用するフェーズでも利用者とのインタフェースの部分が重要になってくることが考えられます。
顧客ニーズを理解しているかということです。コールセンターの場合では、問合せの顧客がどのような点で困りやすいかを理解してQ&Aを用意しておくことが必要です。また、同じユーザーが別件でいろいろと問合せを行った場合に、そこから過去の問合せ内容も加味した対応が求められます。顧客理解度については、最も重要なのはサービスを直接提供する人、コールセンターにおけるオペレーター、ではなく「その事業を推進する責任者自身がどれだけ顧客ニーズをどれだけ理解しているか」が重要です。
このようにサービスの概要を見てみると、IoTにより機械やデバイスが担うことで従来よりも利便性が高く、顧客満足度の向上につながるサービスが提供できる部分があります。一方で、まだまだ人間が中心にやっていかなければならないサービスが存在するのが分かってくるのではないでしょうか。自社の事業に対して高い顧客満足度につながり、正しいサービス品質評価を得るために、機械で対応する部分と人が対応していく部分を分けて考える必要があるように思います。(次回に続く)
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