熊本氏は「ハードウェアの立ち位置を再定義する必要がある」と主張する。その理由として同氏は、家電業界のビジネスモデルが「モノを売ること」から、「サービスモデル」に移行している点を挙げた(関連記事:製造業は「価値」を提供するが、それが「モノ」である必要はない)。「例えばスマートフォン単体は高額だが、通信会社のサービスモデルの中にバンドルされることで、実質価格が下がっている。だから、これほど普及した。ユーザーのお金の落とし方が変化し、家電業界におけるビジネスのスタイルが単にモノを売ることからサービスモデルに変わりつつある」(熊本氏)。
また熊本氏は、家具メーカーのIKEA(イケア)が販売する“テレビ付きの家具”や、スポーツブランドがウェアラブル市場に参入している例を挙げ、「イケアはテレビを“部品”として自分たちのサービスの延長上に取り込んでいる。ODMやOEMの普及により、生産や設計を外部に委託できる環境が整ったことで参入障壁が下がり、異業種が家電業界に参入してくる時代になった。家電はもはや家電メーカーのものではない」と家電業界を取り巻く市場環境の変化を指摘する。
こうした市場環境の変化に対し、モノづくりを手掛ける企業はどういった戦略を取るべきなのか。熊本氏は主に2つのテーマを挙げた。1つ目は「ユーザー体験から考えるモノづくり」である。「技術力だけを磨いても、その製品がユーザーのライフスタイルにどういった価値をもたらすかを提案する力がなければ意味がない。ビジネスを“モノを売る”ではなく“サービスを提供する”と捉えていく必要がある。今後IoT(モノのインターネット)の時代になればこの流れは加速する。よって、持っている技術の使い方、そしてユーザー体験から逆算したモノづくりがさらに重要になると考えている」(熊本氏)。
熊本氏が挙げた2つ目のテーマが「オープンイノベーション」だ。熊本氏は「サービスの観点が必要となれば、日本の企業は『では自社のリソースをサービス開発に割けばいい』という発想になる。しかし、これまでモノづくりを行ってきた企業が、価値のあるサービスをすぐに生みだすのは難しい。それならば、最初からオープンイノベーションを当たり前にしていくことが重要」と語る。
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