尾木氏は「インダストリー4.0およびインダストリー4.0が目指すとされているスマートファクトリーは、IoTとIoS(Internet of Services、サービスのインターネット)の一部の概念で、スマートカーやスマートグリッドと同様の考え方だ」と語る。また、これらを実現するために重要になってくるのが「垂直方向と水平方向のスマートファクトリーの連結」だ。
垂直方向の連結とは、工場全体を「サイバーフィジカルシステム(Cyber Physical System)」とすることを目指す。サイバーフィジカルシステムとは、工場全体の現場(Physical)の情報をセンサーやRFIDを活用することで、ICTシステム(Cyber)上に取り込み、これを蓄積・分析し、これらのフィードバックを現場に反映させるという仕組みのことだ。ICT上で行われる製造シミュレーションを現場の生産活動に一致させ、コンピューティングパワーを現場の生産性向上に直結させることを目指している。そのためには、現在バラバラでサイロ化しているERP(Enterprise Resource Planning)などの基幹システムや生産管理システム、製品ライフサイクル管理(PLM)システム、製造実行システム(MES)、ロボットや製造機械などの制御システムなどを一元管理できるようにしていかなければならない。
水平方向の連結とは、サプライチェーンおよびバリューチェーンの情報通信ネットワークによる連結だ。製造業による生産活動は現在、1社により完結するものはほとんどない。ある工場で生産する場合、原料や部品、組み立て(アセンブリー)工程などを外部に出したり、外部から調達したりする。それらについても各情報システムを連結し、一元的に管理できるようにしていくというものだ。
尾木氏は「これらを実現するにはさまざな技術開発や企業間調整などが必要になる」と語る。インダストリー4.0の推進ではZVEI(ドイツ電気・電子工業連盟)やVDMA(ドイツ機械工業連盟)、BITKOM(ドイツIT・通信・新メディア産業連合会)などが中心となり、2013年に「インダストリー4.0プラットフォーム」が組織され、それぞれの課題に取り組んでいるが、同プラットフォームでは以下の8つの優先エリアを定めているという。
尾木氏は「インダストリー4.0はICTと生産技術の新たな融合だ。2014年4月に完成した白書では、この8つの優先エリアのもと、17のテーゼが定められ、これらの解決に向かった取り組みが始まっている」と話している。
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中編では、フラウンホーファーIPA(生産技術・オートメーション研究所)のヨアヒム・ザイデルマン氏の講演内容について紹介する(中編に続く)。
ドイツ政府が推進する国家プロジェクト「インダストリー4.0」。その目指すところは、現在よりも一段と高度化した生産システムです。同様のモノづくりのさらなる高度化に向けた取り組みは、米国や日本などでも巻き起ころうとしています。「インダストリー4.0が指し示す次世代工場の姿」特集では、「インダストリー4.0」が目指す姿や標準化の道のりなどを追うとともに、日本で高度な生産方法や生産技術に挑戦する動きを取り上げています。併せてご覧ください。
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