関連部門との協議の結果、プロジェクトの目的や達成目標が決定したら、最終的に経営層に上申するための「プロジェクト企画書」を作ることになります。これには、対象範囲やスケジュール、推進体制、概算予算、候補製品などが含まれます(図2)。しかし、多くの中堅企業ではERP導入の経験もないので、スケジュールや予算感などを検討するのに苦労するケースが多くなります。現行システムの保守ベンダーに相談することもできますが、ERP導入の経験がない担当者だと、従来型のシステム開発の経験に基づく回答になってしまい、適正なスケジュールや費用を提示してくれるとは限りません。また、ERP製品についても、自社で扱っている(=そのベンダーが売りたい)製品の情報しか取得できないので、満足できる回答が得られないでしょう。
インターネットやセミナーを通じて、自ら情報を収集するのも方法の1つではありますが、ERPベンダーなど情報を持っている人から情報提供してもらうことも有効です。ERPベンダーの営業であれば、年商や社員数、導入対象の領域などの基礎情報を伝えれば、おおよその導入スケジュールや費用などを教えてくれます。それらの情報を活用することで、効率的かつ効果的にプロジェクトの企画を作成することができます。
このときに注意が必要なのは、必ず複数ベンダーから情報を収集するということです。ベンダーごとに、ERP導入の進め方やユーザー企業との役割分担などが異なります。要件定義から本番稼働後の安定稼働まで手厚くサポートしてくれるベンダーもあります。一方、ユーザー企業側も一定の作業を担当することで、参画するエンジニアの人数を抑えるような進め方をするベンダーでは、当然ながら費用を安く抑えられます。また、営業担当者の性格によっても、思い切って短期間で安めの金額を提示したり、余裕を持った期間で高めの金額を提示したりと、結構バラつきが大きいものです。従って、複数のベンダーから情報を集めて内容を比較し、妥当と思われるスケジュールや費用を確保することをお勧めします。
ERPベンダーと関係を構築するには、ERPベンダーが主催するセミナーに参加するのが効果的です。ERP市場でどのような製品が存在していて、それぞれどのような特徴を持っているのかを理解するのはもちろん、各ベンダーの営業担当者とのコネクションを作るのに役立ちます。ERPベンダーは、これまでの導入事例など多種多様な情報を持っています。上手く付き合うことにより、自社にとって有益な情報を入手することができるので、普段から関係の構築・維持を心掛けるとよいでしょう。
なお、ERP導入支援の実績が豊富なコンサルティング会社も、情報収集の対象としては有効です。複数の候補ERP製品から自社の要望に合致しそうな製品を紹介してくれたり、ERP導入プロジェクトの進め方についてアドバイスをもらったりできるでしょう。ERPベンダーとは異なる情報を収集できるので、情報源として非常に有効です。
次回は、ERP製品と導入ベンダーの選定について説明します。自社の要求に合わないERP製品や実行力に乏しい導入ベンダーを選定してしまうと、その時点でプロジェクトの失敗確率が非常に高くなります。そのような状況に陥らないためにはどのように選定を行うべきなのか、重要なポイントについて解説します。
(次回へ続く)
大手製造業企業で社内SE、大手SIベンダーでERPコンサルタントを経験し、スカイライトコンサルティングに入社。大手企業からベンチャーまで、幅広い会社に対してのコンサルティングを実施。経営管理領域を中心に、IT戦略立案から全社的な経営改革、業績管理制度の構築、業務改革、システム導入、新規事業の立ち上げなどのプロジェクトに携わる。中小企業診断士。
独立系中堅・中小企業の海外展開が進んでいます。「海外生産」コーナーでは、東アジア、ASEANを中心に、市場動向や商習慣、政治、風習などを、現地レポートで紹介しています。併せてご覧ください。
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