小川氏は日産自動車のスーパーカー「GT-R」の2014年モデルに、PCM法で製作されたトランクリッドが採用された事例を紹介した。アルミで製作した場合と比較して、同等の耐久性能を確保しながらトランクリッドの重量を約40%軽量化することに成功したという。「剛性、ねじり剛性などはアルミ製のものと同様の性能。面剛性に関してはアルミ製の1.5倍という結果も出ている」(小川氏)。
三菱レイヨンは2013年11月から、子会社のチャレンジを開発・生産拠点として自動車向けCFRP部品の量産を開始している。“量産”が課題であるCFRP部品だが、小川氏は「現在、三菱レイヨンのCFRP部品の量産規模は、月間生産台数が3000台程度の車両に対応できる程度だ」と話す。
小川氏は今後、さらなるCFRP部品の量産拡大に向けて、PCM法の工程の一部を自動化する考えを示した。「BMWの電気自動車『i3』に採用されているCFRP部品の生産は、工程をほぼ自動化することで大量生産に対応している。今後、複雑な3次元形状のプリフォームをいかに量産するかが重要になると考えている。将来的にはプリフォームの製造を自動化することで量産に対応していく予定」(小川氏)。
小川氏は講演で「自動車部品における軽量化ニーズは、日々高まっている。外板、フレーム系、骨格系、サスペンション系、ホイール系の順で、それぞれの部品にさらなる軽量化が求められるようになる」と説明した。
こうした自動車のさまざまな部品へのCFRPの適用については「欧州を中心に車体軽量化の材料技術は日々進歩している。使用されている素材は、鉄などの金属やCFRPなどさまざまで、部品の信頼性を保つためには適材適所の選択を考える必要がある。今後は、鉄やアルミとCFRPを上手く組み合わせた、マルチマテリアル化のための技術が求められる可能性が高い。三菱レイヨンは、金属とCFRPを組み合わせた製品の開発にも注力している」と説明した。
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