RH850/P1x-Cシリーズは4つの技術課題をどのようにクリアしたのだろうか。
1つ目の「セキュリティ」は、車載セキュリティ回路であるHSM(Hardware Security Module)の採用で対応した。HSMは、車載セキュリティの確保を目指して欧州のEvitaプロジェクトで、Evita-Mediumと呼ばれるECUレベルのセキュリティをクリアできるとされている。
2つ目の「ネットワーク」では、最大で30チャネルものネットワークインタフェースを用意した。最大4チャネル使用できるCANは、さらに帯域幅を拡大できるCAN FD(CAN with Flexible Data Rate)の規格策定が完了(2015年4月予定)するのに合わせて正式に対応を表明する方針。最大2チャネル使えるイーサネットは、サラウンドビューなどへの利用が見込まれているEthernet AVBではなく、制御系システムにも適用できる次世代の車載イーサネットに対応するために用意した。
3つ目の「センシング」は、センサーからの情報を判断するための処理性能向上やメモリ容量の増加で対応。プロセッサコア「RH850G3M」を2個使って互いの動作を監視するデュアルロックステップ構成をさらに2組用意するとともに、処理速度をRH850/P1xシリーズの160MHzから240MHzに高めた。メモリ容量は、フラッシュメモリで最大8Mバイト、RAMで1Mバイトまで増やした。
4つ目の「セーフティ」は、RH850/P1xシリーズと同じ機能で対応した。先述したデュアルロックステップ構成のプロセッサ、メモリのECC(Error Check and Correct)機能、各故障検出機能自身の故障を検出するBIST(Built-in Self-Test)機能、各モジュールからのエラー信号入力に対してエラー端子出力やリセット発生などの設定が行えるECM(Error Control Module)などで、ISO 26262で最も高い安全要求レベルであるASIL Dへの準拠は可能になっているという。
会見では、単眼の車載カメラと車載情報機器向けSoC「R-Car E2」、そしてRH850/P1x-Cシリーズを使って追従走行機能を実現したラジコンカーによるデモも披露した。大村氏は「今回のデモのソフトウェア開発は1カ月弱で完成させた。従来のように専用のASICやマイコンを使う場合であれば、同じ機能を実現するのに数カ月かかっていただろう。RH850/P1x-Cシリーズによって、ソフトウェア開発が極めて容易になることを訴えていきたい」と述べている。
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