日本企業がイノベーションに組織的に取り組まないことの背景には、世界と比較した場合の日本企業のイノベーションに関する考え方の特異さがある。
2014年版GEグローバルイノベーション・バロメーターでは「イノベーションを成功させるために当てはまるプロセスは『イノベーションプロセスを通じて計画的に生み出す』と『クリエイティブな個人から自発的に生まれる』のどちらか」という問いがある。これに対し、グローバル平均では62%が前者だったが、日本企業は60%が後者を選ぶ結果となったのだ。ちなみにこの60%という比率は26カ国中最高の比率だ。
「海外企業は組織として計画的にイノベーションを生み出せるという考え方をしているが、日本企業はスティーブ・ジョブズのような天才が1人で生み出すものという考え方になっている。“闇研(やみけん:組織のバックアップがない少人数での研究開発活動)”など個人の努力で勝手に生まれてくるものとし、そのため組織として支援すべきものだという認識が薄い」と米倉氏は述べる。
これらの考え方に立つため、日本企業のイノベーション関連組織の設置方法も海外企業と大きく異なる。
「イノベーション担当チームを設置する場所」についての質問に対し、グローバル平均では「既にあるビジネスラインの中に設置」が68%となったのに対し、日本企業は「社外に設置」が65%を占めたのだ。この65%という数字は2位だった韓国と19%も差があり、日本企業の独特な組織体制が浮かび上がる。
「日本企業は『イノベーションは独自性のある個人が生み出すもの』という考え方をするため、既存のビジネスラインに置くと“かき乱される”という発想になる。そのため既存のビジネスが影響を受けないように社外に置くことになる。しかしそれでは実効性のあるビジネスは生まれづらい」と米倉氏は分析する。
さらに米倉氏は「日本企業は、イノベーションについて考える範囲が狭いことが問題だ。既存のビジネスでも発想1つで革新を起こすことができる。売り方や売り先を変えたり、新しい要素を組み合わせたり、それだけで今までにない市場に今までにない価値を提供することができるようになる。そういう発想の柔軟さが必要だ」と語る(関連記事:その製品が売れないのは「良くないから」だ――一橋大学米倉教授)。
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