解析のブラックボックスをなくせ――現場で生かせる基礎講座を提供CAEニュース(1/2 ページ)

エムエスシーソフトウェアは今夏、有限要素法の集中講座を行う。講座を実施することにした理由の1つは、基礎知識の習得機会が、なかなかないことに対する危機感だという。

» 2014年08月15日 14時00分 公開
[加藤まどみMONOist]

 エムエスシーソフトウェア(以下MSC)は、2014年8月19日から6日間にわたり、「サマースクール2014『有限要素法理論』」を東京理科大学の森戸記念館で実施する。昨年は材料力学をテーマに同様の講座を実施した。学生のみを対象にしたところ、社会人からの要望も大きかった。そのため今年は対称を学生以外にも拡大したという。企業の他に大学教員からの応募が集まっているそうだ。

photo 昨年(2013年)のサマースクールの様子

 MSCがこのサマースクールを始めたのは、学生のうちに基礎をしっかりと学ぶことができていないという問題意識からだという。例えば解析を行う場合にベースとなる四大力学は、それぞれが密接に関係し合っている。全てをカバーして初めて本当に解析問題が解ける。にもかかわらず大学の授業でも最近は、こういった基礎的な科目が選択制になっているケースが多いという。また「材料力学をはじめとする基礎科目は、じっくり取り組めば面白いにもかかわらず退屈だと思われがち」(エムエスシーソフトウェア 代表取社長の加藤毅彦氏)。そのため学生が敬遠しがちだ。

photo エムエスシーソフトウェア 代表取社長の加藤毅彦氏

 「大学側にも、本当に教えたいことを教えられないというジレンマがある」(加藤氏)。

 基礎的な学問を早く終わらせて先進的な研究に取り組むことができればよいが、研究前に基礎的な学問の必要性が分かりづらいため、学ぶ動機にはつながりにくい。その結果、「大学で基礎的な知識を身に付けないまま就職するといった事態が生じている」(加藤氏)。


欧米から見る大学教育の不足

 さらにサマースクールを実施する動機となったのが海外での学習状況だ。アメリカやドイツをはじめとして、多くの大学では卒業条件が厳しい。その中で学生はしっかり基礎的な学問を学んだ上で企業に就職する。3D CADや設計、解析に必要な基本は学生のうちに経験、習得しているということだ。この日本と欧米との違いは、MSCの教育機関向けCAEツールのダウンロード数にも表れている。このツール「Student Editions」は学生であればフリーで使用できるが、日本からのダウンロード数は主要国の中でも特に低いのだという。こういったことから、MSC自身でできることとして、直接教育を行うことにしたという。

 昨年のサマースクールでは、材料力学をテーマに据え、入門編の「式のない材料力学」から実践的な上級編までを実施、延べ約270人の学生が受講した。その中で多かったのが、社会人向けにも実施してほしいという声だ。かつては学生が基本的な知識を習得していない場合は社内で教育を行っていた。だが近年は企業側にも新人を一から教育する余裕がなくなっている。一方、解析ツールは基礎知識がなくとも一定の答えが出る。その結果、応力やひずみの概念を理解せず、解析結果が出てもその意味を理解できないといった問題が頻繁に起こっているという。

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