THKインテックスは、「TECHNO-FRONTIER 2014」(2014年7月23〜25日、東京ビッグサイト)で、人の動きを完全にカバーする双腕ロボットによる生産作業のデモを行った。機器とロボットを制御システムで接続する必要がなく、生産ラインの人間の作業をそのまま代替できることが特徴。
THKインテックスは、「TECHNO-FRONTIER 2014(テクノフロンティア 2014)」(2014年7月23〜25日、東京ビッグサイト)において、川田工業製双腕ロボット「NEXTAGE(ネクステージ)」を活用し、生産現場でのロボット活用例を紹介した。
THKインテックスでは、川田工業と提携し次世代双腕型産業用ロボット「NEXTAGE」を組み込んだロボット稼働システムを2011年から展開している。NEXTAGEは頭部にステレオカメラ、手先にハンドカメラを搭載しており、部品や工具の位置を確認しながら作業できるのが特徴。可搬重量は片腕1.5kgと小さいが、サーボモーターは全て80W以下の低出力になっており、人間と同じ環境で作業しても安全である。
従来の生産ラインのロボット活用では、ロボットと各種機器をそれぞれシステムとして連携させ、制御信号を同期させることで、それぞれの機器の動作とロボットの動きを合わせていた。しかし、NEXTAGEであれば、頭部のステレオカメラと手先のハンドカメラによる画像認識で、信号を同期させなくても各種作業を行える。そのため結線の手間などが不要で、新たにライン構築する場合やラインを組み換えする場合でも、従来のロボット活用手法と比べて、短期間で立ち上げられるという。
また人間が行うように「ボタンを押す」や「検査機器に設置する」などの動作を行えるために、人間が行っていた作業をそのままロボットに代替させることが可能となる。TECHNO-FRONTIER 2014では、これらの全ての作業をロボットで自動化できることを示すため、搬送されてきた部品のピックアップから、組み立て、検査、次工程への受け渡し、などの一連の作業を一台のロボットで実現する様子をデモした。
THKインテックス 三島工場 装置事業本部 ロボット部 課長の内山勝博氏は「NEXTAGEによるロボット生産システムは、2013年あたりから需要が急増してきた。生産作業において、組み立て作業そのものの自動化は進んできているが、検査作業やモノを移動させる作業など、各作業工程には“自動化のすき間”が存在している。そこをロボットに代替させることで生産効率はまだまだ高められる」と語っている。
ただ、現在生産ラインで利用しているロボットや自動化設備などとは別の使い方を考える必要はあるようだ。内山氏は「ロボットというと高精度で高速の動作を想像する人が多いかもしれないが、このロボットの役割はそこにはない。作業速度は熟練者より遅いが、疲れないため24時間稼働が可能である点が特徴だ。条件によって変わるが、パート2人を雇う作業を代替させるのであれば、採算が取れる」と話している。
実際に、自動車産業や電機産業、食品産業などさまざまな業種で利用されているという。「業種や作業内容が限定的でなく企業によって使う用途は異なる。極論すれば人が行っている作業は全て置き換えることができる」(内山氏)としている。
生産効率を抜本的に高める手法としては、ロボットでセル生産を行う“ロボットセル”などが大きな注目を集めているが、ラインの組み替えなどの作業に負担が掛かる場合も多い(関連記事:製造の未来を切り開くロボットセルの価値と課題)。しかし、NEXTAGEによる生産組み換えは「構造がシンプルであるので非常に容易。人間が作業していた工程を途中からロボットが行ったり、ロボットが行っていた工程を人間が行ったり、自由に入れ替わることさえ可能だ」(内山氏)。
内山氏は「ロボットがそのまま人間に置き換わって生産を行う姿はSFの中のものだと考えている人もいるが、もう既に実際に商用ベースで利用されている。この事実について認知を広げて、ロボット活用による生産性向上を強く訴えていきたい」と話している。
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