前回のInnovation Daysでお披露目された新エンジンシリーズの開発にも進捗があった。話題の中心だった排気量1.5lの3気筒エンジンに加えて、ベースの設計思想を共有する4気筒エンジン、6気筒エンジンが開発されており、全てに共通の「コモン・アーキテクチャ」を採用する。1気筒当たり500ccを基本とし、それに気筒数を掛けた排気量のエンジンをラインアップする。その結果、排気量の異なるエンジン(ガソリン、ディーゼルとも)の間で60%もの部品を共有できる。
また、同じ排気量のガソリンエンジンとディーゼルエンジンでも設計を共有できる部分があり、40%ものパーツを共用できる。さらに、全ての3気筒エンジンと4気筒エンジンは、横置きにも縦置きにも対応可能。つまり、「MINI」ブランドにもBMWブランドに使えるということだ。
新エンジンシリーズでは、サーマルマネジメントへの配慮がなされている点も特筆すべきだろう。熱のマネジメントを1カ所に集中させ、熱交換器を付けるなどして、ボディから熱エネルギーが逃げるのを防ぎ、集めて再利用する。一例としては、エンジンを冷やさない工夫がある。写真で見ると分かりやすいが、エンジンを断熱材で丸ごとくるんで熱を保つ仕組みだ。エンジンが温まった状態を保ち、再始動すると、1.5%もの燃費向上につながるという。高温のエンジンを直接くるむには、素材選びやカバーの手法にノウハウが求められる。しかしBMWは、あえてエンジンを直接くるむ手法を選び、断熱材の使用量を最小限に抑えた。
もう1つ、2014年発売予定のPHEV「i8」でオプション設定される、レーザー光源を用いたヘッドランプ「レーザーライト」も新しい。高級車では主流になりつつあるLEDヘッドランプを標準装備することに加えて、デイタイムランニングライト上側のU字型の部分にこのレーザーライトを組み込むのである。
蛍光リン系の素材を使ったレーザー光源により、白味が強調された光を出力できる。レーザー光は真っすぐに進む特性があり、照射方向もしっかり調整できる。また、LEDヘッドランプの輝度が120ルクスであるのに対し、レーザーライトは340ルクスに達する。光の量を表す光束は、LEDヘッドランプが100ルーメン/Wであるのに対し、レーザーライトは170ルーメン/W。光束が高いということは、人間の目で見て明るく感じるということだ。
その結果、照らし出すことができる距離は600mに達し、LEDヘッドランプより遠方を確認できるようになる。また、白色が強調されたレーザーライトの色あいは、見た目の未来感の演出にもつながる。
BMWの競合であるAudi(アウディ)も、2014年1月の「2014 International CES」でレーザー光源を使ったヘッドランプを発表している(関連記事:ル・マンの夜闇をレーザーが切り裂く、アウディがWEC参戦車両に採用)。こちらは同年6月の「ル・マン24時間耐久レース」でデビューし、その後市販車に搭載される予定。レーザー光源を使ったヘッドランプは今後、高級車に欠かせない装備になっていきそうだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.