日本マイクロソフトは「2014 Technology Update」と題し、“デバイス&サービス カンパニー”として変革を推し進めるMicrosoftの研究・開発の最新動向を説明。その中で、アジア圏の基礎研究部門である「Microsoft Research Asia」の研究・開発事例が幾つか紹介された。
日本マイクロソフトは2014年1月27日、「2014 Technology Update」と題して記者説明会を開催。“デバイス&サービス カンパニー”として変革を推し進めるMicrosoftの研究・開発の最新動向を発表した。その中で、アジア圏の基礎研究部門である「Microsoft Research Asia」の研究・開発事例が幾つか紹介された。本稿ではその模様を中心にお届けする。
「Microsoft Research(MSR)」は1992年、米ワシントン州レドモンドに設立されたMicrosoftの基礎研究部門である。世界7カ所に拠点があり、約1100人の博士号を持つ研究者が在籍し、最先端技術の研究・開発を行っているという。その中で、アジア圏をカバーするMicrosoft Research Asiaは、1998年11月に中国・北京に設立され、NUI(Natural User Interface)や次世代マルチメディア、データ指向コンピューティングなどの研究を進めているそうだ。
マイクロソフト ディべロップメント 代表取締役 社長 兼 日本マイクロソフト 業務執行役員 最高技術責任者である加治佐俊一氏によると、「数年前まで、Microsoft Research Asiaに在籍する日本人研究者は1人だったが、現在では6人の日本人研究者が活躍し、最先端の研究・開発に携わっている」という。説明会では、Microsoft Research Asiaが中心となり研究・開発を進めている「Urban Computing」「3D FACE」「3Dプリントにおける最適化」「BodyAvater」の4つが紹介された。
Urban Computingとは、都市に存在する人、乗り物、建物、道路、そして、無数に点在するセンサーやデバイスといった全てのものを、都市の変動(ダイナミクス)を計測するための1つのコンポーネントと見立て、収集されるさまざまなデータをコンピュータで分析・解析することで、地域の課題解決に役立てようというコンセプトだ。
「ご存じの通り、Microsoft Research Asiaのある北京は、深刻な交通渋滞やPM2.5(微小粒子状物質)に代表される大気汚染が課題となっており、研究者にとっては非常にチャレンジのしがいがある環境といえる。Urban Computingはこうした環境から生まれたコンセプトだ」(加治佐氏)。スマートフォンやタクシーなどに搭載されている各種センサーからの情報、気象情報、そして、生活する人々が使用するSNSなどの情報を組み合わせ、解析することで、都市活動や環境変化の状況をつぶさに捉えることができ、さまざまな予測にも活用できるという。
この技術を応用すると、交通渋滞の影響を最小限に抑えたナビゲーション機能の提供も行える。例えば、出発地点(現在位置)ですぐにタクシーを拾うのではなく、ある地点まで歩いて移動してからタクシーを拾う方が渋滞の影響を受けないだとか、降りる際も、目的地の少し手前の交差点で降りて歩く方が効率的に移動できるだとか、今現在の交通状況を考慮したインテリジェントなナビゲーション機能を実現できるという。さらに、深刻な大気汚染に対しても「例えば、ジョギングする際、大気が汚れている地域を回避したコースを提案してくれる機能なども提供可能だ」(加治佐氏)。
説明会では、Microsoft Research Asiaが公開している「UrbanAir」を紹介。UrbanAirは、北京に設置されている36個のセンサー情報を活用し、大気中のPM2.5の値などを地図上に表示してくれるWebサービスだ。センサーが設置されている場所の数値を基に、センサーのない範囲の汚染状況を予測して表示する機能なども備えている。「いろいろな制約もあり36個しかセンサーが設置されていない。このため、センサーで直接カバーし切れていない箇所の状況を精度良く予測する技術が非常に重要だと考えている」(加治佐氏)。
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