中小製造業の生き残り戦略とインターネット――中村智彦教授、語る中小製造業の横連携イベントで見る今(2/2 ページ)

» 2014年01月31日 10時30分 公開
[小林由美,MONOist]
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中小製造業横連携における情報発信の例

 長野県内の技術者コミュニティーである「SWCN」は、地域の製造業企業間のネットワークを重視し、コミュニティー主催イベントを開催してきた。Web上での情報発信も行ってきた。そんなSWCN自身が開催するイベント規模や交流規模も拡大してきている。コミュニティーメンバーを刺激し、勢いに拍車を掛けたのは、やはりSNSの活用だったようだ。

SWCN 5th Impactの講演会場:信州大学繊維学部講堂

 2012年3月にMONOistが全国の中小企業が集まって開催した「全日本製造業コマ大戦」に出場した際、コマの機構設計をSWCNメンバーであるスワニーに依頼した。その後、当時の設計を発展させた製品「サクラコマ」が誕生し、伊那市内の中小製造業7社と市社会福祉協議会による「製造業ご当地お土産プロジェクト」が実現した。要は、「伊那市内の企業で地元のお土産を企画・製造・販売することで、地元産業を振興する」プロジェクトである。2014年2月から、サクラコマで得た収益を生かして製作した「とことこイーナちゃん」の販売も開始する。

MONOistチームとして出場した際のコマ(回転時):花弁部がスワニー製、金属のコマ部が由紀精密製

「製造業ご当地お土産プロジェクト」で誕生した「イーナちゃんプラモ」(とことこイーナちゃんの原案:左)と「サクラコマ」(右)

 SWCNのイベントでは、ストリーミング配信や録画配信、プロモーション動画制作などが当たり前のように行われているが、それもまた10年以上前では、その道に詳しい人の手を借りないと難しかったことだった。

 このようなイベントを開催するとともに、今日の恵まれたIT環境を駆使して情報発信し、「自分たちが今、一体どんなことをやっているのか、広く世の中に伝えていくことが必要」だと中村氏は言う。その一方で、「大きな規模のイベントとなれば、いろいろな人が集まってくる。“本物”を見極める目を養っていく必要がある」とも述べており、情報を得る・関わる側の高いリテラシーも必須となってくるといえる。

 また、SWCNに見られるように、単に企業間の交流というのではなく、地域社会の中での企業の役割を認識し、異業種・異分野の人たちとの地域内ネットワークを構築することが大切だ。

 「中小企業の経営者の中には、たまたま自分たちのネットワークグループがマスコミなどに取り上げられ、行政から表彰されたりすることで拡大志向に走る人たちもいるが、大切なのは自分たちの立ち位置をしっかり固めること。SNSで世界を広げる一方で、自分たちの地域社会を大切にする姿勢を失うと、一時の流行に終わってしまう」(中村氏)。

「常識」という名の思い込みを捨て、便利な道具をうまく使え

 「SNSには、『なりすまし』『バカ発見機』といったネガティブな話題も多いが、使い方を誤らなければよいだけ。ちゃんと使えば答えてくれる」(中村氏)。SWCNのイベントを見ても、SNSは道具であり、目的にはなりえない。「便利な道具は積極的に使えばいい」。あくまで、そこで生まれたきっかけを自分がどう生かすかである。それを忘れることなく、日本のモノづくりを発展させていってほしいと中村氏は述べた。

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