長野県内の中小企業に在籍する3次元CADを操る設計者が集うコミュニティー「SWCN」のイベントに、製造業社長ブロガーであるミナロの緑川賢司氏が登場! いま話題の全日本製造業コマ大戦についても語った。
2012年7月28日、長野県内の中小企業の3次元CADを操る設計者が主に集うコミュニティー「SWCN(SolidWorks Club of Nagano)」主催のイベント「SWCN 4th Impact」が長野県伊那市で開催された。同イベントでは、モノづくりをテーマとした基調講演や議論セッション、分科会などが実施された。さらに懇親会として「全日本製造業コマ大戦G3 信州場所」も催された。
今回は全国各地から非常に多くの来場者が訪れ、もはや“長野のイベント”とはいえないほどに大規模となった。2011年のイベントでの来場者数は125人だったが、今年は240人とほぼ倍増した形だ。その要因としては、SWCNのコアメンバーたちがFacebookを活用し、長野県外のモノづくり団体との交流を積極的に深めていったことも大きいだろう。
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基調講演では、SWCNメンバーたちも親しく交流する木型メーカー ミナロ(横浜市金沢区) 代表取締役 緑川賢司氏が登壇した。製造業社長ブロガーとしても知られる同氏が、中小企業のメディア活用や、これからの日本製造業のあるべき形について語った。
本稿ではその講演内容に基づき、ミナロとはどういう企業なのか、緑川流の日本経済復興論、そして新聞・テレビでも注目された「全日本製造業 コマ大戦」に取り組む理由などを詳しく紹介していく。
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リーマンショック以来続く不況で、国内企業の倒産数は増大しており、いまや大手企業でさえも数千人クラスの人員整理を実施している。そんな中、「終身雇用」という望みはかなえづらくなり、何年後かに自分が今の職場にいられるかどうかの保証も厳しくなった。
もしあなたが長年勤めた会社が倒産したら、もしくはあなたがリストラされたら、どうするだろうか。真っ先にハローワークに行って、職探しをする。取りあえず、派遣登録する。……など、いろいろ選択肢はある。
緑川氏は今から10年前の2002年、突如、職を失った。当時30代だった同氏は、冒険ともいえる決断をした。
1990年代後半、バブルが崩壊したことで日本の経済は深く落ち込んだ。当時、緑川氏が勤めていた木型製作所も、そのあおりを受け続け、操業すればするほど借金が膨らむという極めて悪循環な状況まで追い込まれた。そして製作所は、事業停止。
同氏は、再就職を含め、さまざまな選択肢について考え抜いた後、「元従業員の有志で、新しい木型製作所を立ち上げる」という選択をした。「しばらく給料出ないかもしれないけど、それでもいい?」という言葉にうなずき、付いてきてくれたのは2人だった。そして解散した製作所から引き継いだ顧客は、たったの3社。
2002年8月時点、従業員3人、顧客数3社。ミナロはここからスタートした。――2012年現在、同社の顧客数は、大手企業、中堅・中小、個人まで全て含めて、約3000、従業員10人。顧客ターゲットを企業だけではなく個人にまで広げ、インターネット(Webサイト)を使った自社PRを積極的に実施した成果だ。
ミナロが創業時に真っ先に取り組んだのが、Webサイトのドメイン「minaro.com」の取得だった。Webサイトを同社の看板にしていこうと考えたからだ。2002年当時、中小の製造業で、ミナロほど積極的にWebサイトやブログを活用している企業は、現在ほどいなかったと緑川氏は言う。そんなときだからこそ、力を入れて取り組めば、よく目立った。「小さい会社は目立ってナンボ――作ったばかりの会社で、誰も知らない。そんな状態で、どうやって会社に仕事を持ってくるか、どうやって目立つか。当時は、そんなことを一生懸命考えていましたね」(緑川氏)。
「目立ってナンボ」とだけ言ってしまうと、“不真面目で派手”な印象になってしまうのかもしれない。しかしミナロの業務方針は、むしろその逆。「モノづくりで妥協しない」「厳しい価格や納期でも、何とか頑張る」「困難な仕事にも果敢に挑み、技術を磨く」といった“真面目で手堅い”モノづくりを続けてきた。
ともかく、緑川氏が考えたのは、顧客や知人を通じて「存在を伝えてもらう」「口コミしてもらう」ことだった。その仕組みの1つが、Webサイトやブログだった。
同社ブログの「ミナログ」では、自社業務や営業についての宣伝的なことは書かれておらず、緑川氏や従業員たちの思い、社外活動のことが多くつづられている。その目的が、とにかく顧客(ユーザー)とのコミュニケーションを図ることに主軸が置かれているためだ。
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