ホンダの軽自動車「Nシリーズ」の最新モデル「N-WGN」は、Nシリーズの最大の短所だった燃費性能を大幅に改善し、JC08モード燃費で29.2km/lを達成した。これは、競合するダイハツ工業の「ムーヴ」の29.0km/lを上回り、日産自動車と三菱自動車の「DAYZ/eK」の29.2km/lに並ぶ。N-WGNはいかにして燃費性能を向上したのだろうか。
ホンダが2013年11月22日に発売したハイトワゴンタイプの軽自動車「N-WGN」の販売が好調だ。発売から10日間の累計受注台数が、月間販売目標台数である1万2000台を突破したという。
N-WGNが属する、全高が1600mm程度のハイトワゴンタイプの軽自動車は、2013年の国内市場で最も競争が激しかった車両カテゴリーと言っても過言ではない。
2013年に入る直前の2012年12月、ダイハツ工業がほぼフルモデルチェンジと呼べるようなビッグマイナーチェンジを施した「ムーヴ」を発売した。ハイトワゴンタイプ軽自動車でトップとなるのJC08モード燃費29.0km/l(リットル)を達成するとともに、5万〜6万円と格安の運転支援システム「スマートアシスト」も搭載し、業界に衝撃を与えた(関連記事:新型「ムーヴ」の燃費は「ワゴンR」以上、走行性能でも「N-ONE」に対抗)。
2013年6月には、日産自動車の「DAYZ」と三菱自動車の「eK」が発売された。両社が共同開発する軽自動車の第1弾で、ムーヴを上回るJC08モード燃費を29.2km/lを達成した(関連記事:「DAYZ」と「eKワゴン」を競合3車種と比較、装備充実の上位グレードがお買い得)。そして同年9月には、2012年9月にフルモデルチェンジしたばかりのスズキの「ワゴンR」が、JC08モード燃費を30.0km/lまで高めるとともに、4万〜5万円と「スマートアシスト」よりも安価な運転支援システム「レーダーブレーキサポート」を搭載して発売された(関連記事:「ワゴンR」のJC08モード燃費が30.0km/lに、プリクラッシュも4〜5万円で搭載可)。
ムーヴ、DAYZ/eK、ワゴンRが激しい争いを繰り広げる一方で、ホンダのハイトワゴンタイプの軽自動車は、以前から販売してきた「ライフ」と、2012年11月発売の走行性能とスタイルに主軸を置いた「N-ONE」しかなかった。ついに市場投入されるホンダのハイトワゴンタイプ軽自動車の主力車種であるN-WGNには、厳しい市場競争に割って入れるような性能が期待されていた。
軽自動車販売台数でトップを走るスーパーハイトワゴンタイプ軽自動車「N BOX」をはじめ、ホンダの軽自動車「Nシリーズ」を競合車種と比較した場合に、最も見劣りするのが燃費性能である。N BOXのJC08モード燃費は24.2km/l。これに対して、スズキが2013年2月に発売した「スペーシア」は29.0km/l、ダイハツ工業が同年10月に発売した新型「タント」は28.0km/lと大きな差がある。
ハイトワゴンタイプの軽自動車で見ても、ホンダのN-ONEのJC08モード燃費が27.0km/lであるのに対して、ムーヴが29.0km/l、DAYZ/eKが29.2km/l、ワゴンRが30.0km/lと大幅に上回っている。
N-WGNでは、この燃費性能を競合車種と同等クラスに引き上げるために、エンジンやトランスミッションなどのパワートレインの改良とともに、大幅な軽量化も行った。このため、JC08モード燃費はDAYZ/eKと同じ29.2km/lを達成することができた。ついにNシリーズが、「燃費だけはイマイチ」という言葉と決別したのである。
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