齊藤氏は、i-DCDの仕組みについても説明した。i-DCDのDCTでは、1速、3速、5速、7速の奇数段とつながるDCTのメインシャフトは、モーターに接続されている。一方、2速、4速、6速の偶数段とつながるDCTのセカンダリーシャフトは、デュアルクラッチを介してエンジンと接続されている。これらの各変速段から得られる駆動力は、カウンターシャフトを通じて、ドライブシャフト、そして前輪に伝わる。
i-DCDには、EVドライブモード、エンジンドライブモード、ハイブリッドモード、回生モードという4つのモードがあり、それぞれのモードに合わせて、デュアルクラッチでエンジンとモーターの接続/切り離しを行う。
まずEVドライブモードでは、エンジンは切り離しておき、モーターの駆動力のみを使用する。
次に、エンジンドライブモードでは、エンジンの駆動力を使用するため、デュアルクラッチでエンジンを接続する。
エンジンとモーター両方の駆動力が必要になるハイブリッドモードでは、エンジンを接続しつつ、モーターも動作させる。
回生モードは、EVドライブモードとは逆に、モーターを発電機にして、減速時のブレーキエネルギーを電力に変換する。
内燃機関と組み合わせるDCTの場合、内燃機関との接続/切り離しを行うクラッチとギヤシフトの制御のみを行えばよい。しかし、i-DCDの場合、上記の4つのモードをさまざまな状況に合わせて使い分けなければならない。加えて、内燃機関のみならず、モーターについても動力締結/切り離しの制御を行わなければならない。
このため、DCTを制御するTDUや、i-DCD全体を統合制御するECU(電子制御ユニット)に組み込む制御ソフトウェアは、これらの複雑な制御に対応できるようなものに仕上げる必要があった。困難な制御ソフトウェア開発を成功させるため、ホンダの技術者がシェフラーのドイツ本社に常駐するなど、密接な協力が行われたという。
自動車メーカーとサプライヤが共同開発を行う場合、サプライヤの技術者が自動車メーカーの開発拠点に常駐するのは一般的だ。しかし今回のように、自動車メーカーの技術者がサプライヤの開発拠点に常駐する事例はあまり多くない。
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