新卒でメーカーに就職した田中さん(仮名)。理系なので当然エンジニアとして配属されると思っていましたが、意外にも営業に配属されました。退職という言葉が一瞬、頭をよぎったものの、入社してすぐに辞めるのもよくないな、と思いとどまりました。
それからは、営業のアポイントを取ったり、売り上げ目標が達成できない理由を考えたりする日々。もしエンジニアになったのであれば、こんなことで悩まなくても済むのに、と田中さんは考えるようになりました。学生時代は関連領域を専攻していたし、プログラミングも嫌いではないのだから、エンジニアの方が向いているのではないか、と思い始めたのです。
求人サイトを見てみると、未経験歓迎の組み込みエンジニアの求人が見つかりました。何となく名前を知っている企業ということもあり、応募をしてみた田中さん。何と、あっという間に内定をもらうことができました。書類選考や面接を通じて自分が評価されたと感じた田中さんは、久しぶりの満足感や達成感を得ました。
意気揚々と他の会社に採用されたことを伝え、メーカーを退職。入社後の研修では、学生時代の勉強が思った以上に役に立ちました。同じタイミングで入社した他の中途社員が苦労しているのを横目に、すぐに課題を終えることができました。
配属後は、すぐにプロジェクトに参加することに。しかし、当然分からないことが出てきます。周りは忙しそうだし、「こんなことを聞いていいのか?」と考えているうちに、時間は過ぎていきました。疑問を少しずつ残したまま、開発が進みます。進ちょくを確認されても、大丈夫そうです、と答えてしまう田中さん。質問をするかどうか悩んだり、調べたり、ということに時間を費やし、残業が増えていきました。
ある日、状況をOJT担当の先輩に見てもらったところ、「まだ、これしかできていないのか……。分からないところがあったら聞いてくれよ」と言われてしまいました。手伝ってもらったことで納期には間に合いましたが、田中さんの悩みが解消されたわけではありませんでした。
その後も、分からないことがあると、「こんな小さなことを質問すべきなのだろうか」と悩んでしまい、残業が増え続けていきました。営業時代は目標に追われる日々でしたが、エンジニアになってからは納期に追われる日々です。
また、福利厚生をあまり気にしていなかったこともネックとなりました。しばらくすると、メーカー時代に比べ福利厚生が劣っていることが気になってきたのです。さらに、新卒で入社し、手取り足取り研修をしてもらった営業時代に比べると、中途採用の厳しさを感じ始めました。田中さんはやがて、再度の転職を考えるようになりました。
エンジニアを続けるべきか、営業として再度転職するか迷った田中さんは、人材紹介会社に登録することにしました。キャリアカウンセリングでは、最初の転職の理由、今回転職したいと思った理由、学生時代はどんな仕事に就きたかったのかなど、キャリアについての価値観や将来の目標を話しました。
悩みや考えを言葉にしたことで、不安が取り除かれていきました。もともとなりたかったエンジニアの道に進めたのだから、今の会社でもうしばらくがんばろうと決意したのです。もし、前回のように1人で悩み、2度目の転職活動を進めていたら、それ以降も無駄に転職回数を増やし、同じように新しい会社に不満を持っていた可能性があります。
早めに行動に移すべきと述べましたが、考えなしに準備を進めてしまうのは早計です。学生時代に専攻していた領域が楽しかったのは、学生だったから、という理由かもしれません。
学生時代の専攻に関わった仕事がしたいと考えたら、転職コンサルタントに早めのキャリア相談をするのも1つの手です。転職を考えた理由の整理から、今後の可能性、仕事のイメージなど、新しいフィールドにチャレンジするための手助けになるでしょう。
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