現場の発想を即決実行! 三菱電機ホーム機器が高級白物家電で連勝する秘密小寺信良が見たモノづくりの現場(7)(2/4 ページ)

» 2013年09月02日 11時00分 公開
[小寺信良,MONOist]

数多くの“業界初”製品

 1977年には、世界で初めて電子レンジと電気オーブンを一体化した、オーブンレンジを開発・発売した。排気の温風で掃除機内のダニを死滅させる「ダニパンチ」、ステンレスボディ採用のジャー炊飯器、「おそうじメカ」搭載空気清浄機など、数多くの業界初を輩出している。


世界で初めて電子レンジとオーブンを一体化 世界で初めて電子レンジとオーブンを一体化(クリックで拡大)

 中でも1987年発売のフライパン機能付きオーブンレンジのヒットは、業界としても大きなターニングポイントとなった。当時のオーブンは、お菓子やケーキ、クッキー作りなど、毎日作るものでもなく「子どもにそんなことがしてやれたら」という主婦の“夢を売る製品”であった。

 しかしこの製品は、フライパンで焦げ目を付けた後、それをそのままオーブンに入れて調理する、“おかずを作る機器”という切り口で製品化した。ガスコンロで料理している後ろでもう一品おかずができるという、第2の調理器具としてのきっかけを作った。これ以降オーブンレンジ業界は、主婦の日常の料理の負担を軽減するものを開発するようになる。

 現在同社が力を入れるIHクッキングヒーターは、1999年に自社開発して以降、東日本大震災までは順調に2桁成長を続けてきた。震災以降は需要は前年ベースでは落ち込んだが、新築時のビルトイン型の普及は続いている。

びっくリングコイル 複雑な加熱をシーケンスで行うびっくリングコイル(クリックで拡大)

 同社が「びっくリングIH」として導入を勧めているクッキングヒーターは、同心円だけではなく、上下左右に独立したコイルを配置する。これらを内側、外側だけでなく、左右方向にも加熱シーケンスを組むことで、鍋の中で対流方向を変える。煮物料理もかき混ぜる必要がなく、焦げ付きも抑制するという。

 2009年には、蒸気を出さない炊飯器を開発した。これまでの炊飯器は、炊きあがり時に熱い蒸気が出て壁紙を汚したり、あるいは子どもがイタズラして火傷するという事故が多かった。これを水冷タンクを使って蒸気を内部で処理するようにしたのだ。

 この製品は、同年の第3回キッズデザイン賞で大賞を受賞している。家電製品では初めての受賞であり、審査委員からは「キッズデザインの見本とも言うべき製品」とのコメントを受けている。

蒸気レス炊飯器蒸気レス炊飯器の構造 蒸気が出ないIT炊飯器(左)とその内部構造(右)炊きあがった蒸気をパイプで伝送し、水冷タンクに送る(クリックで拡大)

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