なぜ、レスポンスが上がるのか。富士通によれば、遠隔地からネットワークを介した際にも、3次元CADの操作性を損なわない画像データ高速化シンクライアント技術「RVEC(Remote Virtual Environment Computing、レベック)」を採用したからだという。以下に紹介するように、領域ごとの画面更新やCAD画像の効率的な圧縮が可能になったため、動画や高精細な画像を扱う際のデータ転送量を従来の約10分の1に削減できるという。富士通によると、一層のレスポンスの向上を目指して、低品質なネットワーク環境でも、シンクライアント接続時の操作応答を改善できる3つの技術を開発し、まず社内で利用し、今後、顧客への適用を図るという。
3つの技術とは画面データ量削減技術と、ネットワーク遅延対策技術、GPU(Graphics Processing Unit)仮想化技術だ。それぞれがデータ送受信の遅延の問題、データ損失(パケットロス)の問題、描画処理の問題を解決することで、総合的に高速化を実現する。以上の手法を用いると、操作応答を最大10倍、高速化可能だという。
画面データ量削減技術の実現手法はこうだ。まずネッワーク接続時に利用可能な通信帯域を監視する。次に、帯域に応じて画面の画質や描画のフレームレートを動的に変えてサーバからクライアントに送信する(図3)*3)。従来方式である米Microsoftのリモートデスクトップ用プロトコルRDP(Remote Desktop Protocol)は帯域を使い切ることがあり、ここが課題となっていた。新技術ではRDPと比較して、最大10倍高速化できるという。
*3) 最も単純なシンクライアント技術では、1画面全てを動画として送信する。ただし、遠距離間を結ぶインターネット接続下では遅延が多くなり、実用的ではない。そこでRVECでは1画面を多数の長方形の領域に切り分けて監視し、更新が多い領域を動画で、そうでない部分は、更新した差分だけを静止画で送る方式を採った。静止画で送信する部分についても、絵の種類を判定し、圧縮アルゴリズムを切り替えている。こうすることで、CADで多用する線画のにじみやぼやけを防ぎながら高速化できる。
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