富士フイルムは、「nano tech 2013」において、振動板として使用できるフィルム材料「BEAT」を使って試作した、さまざまな形状のスピーカーを展示した。「BEATを使えば、折り曲げ可能なフレキシブルディスプレイで映像と音声の両方を楽しめるようになる」(同社)という。
富士フイルムは、「nano tech 2013(第12回 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議)」(2013年1月30日〜2月1日、東京ビッグサイト)において、スピーカーの振動板として使用できるフィルム材料「BEAT(Bendable Electro-Acoustic Transducer)」を公開した。一般的なフィルム材料と同様に折り曲げが可能な高い可撓性を持つとともに、硬い方が良いと言われる振動板に必要となる高い音響特性も有している。
展示では、BEATを使って試作したさまざまなスピーカーから、音声を出力するデモンストレーションを行った。薄型・軽量のスピーカー以外にも、巻き物のように巻き取れる巻き取り型、折り鶴、扇子といった従来にない形状のスピーカーなどをそろえて、来場者の注目を集めた。
BEATの用途としては、スピーカー単体への適用の他、有機ELなどを使ったフレキシブルディスプレイとの組み合わせも想定している。「映像を表示するディスプレイが折り曲げ可能になっても、音声を出力するスピーカーも折り曲げ可能でなければ、フレキシブルディスプレイの用途は限られてしまうのではないか。BEATを使えば、フレキシブルディスプレイで映像と音声の両方を楽しめるようになる」(富士フイルム)という。
BEATは、電気信号を音声に変換する圧電セラミックスを粘弾性ポリマーの中に分散させた圧電コンポジット層を、電気信号を入力するための電極層で挟み込んでから、さらに保護層となるフィルムで覆うという構造になっている。厚さは「用途によって異なるがおおむね100μm程度」(同社)である。
粘弾性ポリマーは、フィルムを曲げようとする場合に入力される数Hz以下の周波数に対しては柔らかく振る舞う(粘性挙動)。その一方で、圧電セラミックスから出力される周波数が20〜20kHzの音声に対しては硬く振る舞う(弾性挙動)ので、その振動エネルギーを十分に伝達できる。この特徴が、高い可撓性と音響特性を両立させているわけだ。
BEATは、スピーカー用振動板としても高い特性を備えている。振動板の特性には、内部損失と音速がある。一般的には、内部損失が大きいほど、音速が速いほど、振動板として優れている。BEATは、一般的な振動板材料であるコーン紙と比べて、内部損失は大きく、音速も同等クラスを確保している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.