国内の自動車の販売台数シェアトップはトヨタ自動車だ。では特許ではどうなのだろうか。特許の上位企業同士の関係は? パテント・リザルトによる調査結果を紹介する。
自動車は日本の中核産業であり、知的財産の塊でもある。それでは、強い特許を保有している先進企業はどこなのだろうか。
特許分析ソフトウェア開発や特許分析情報提供を行っているパテント・リザルトは自動車・輸送機器業界の企業を対象に日本に出願された特許に基づいた「自動車・輸送機器業界 被引用特許件数ランキング2012」を発表した(表1)。
順位 | 企業名 | 引用された公報数 |
---|---|---|
1 | トヨタ自動車 | 7680 |
2 | デンソー | 6101 |
3 | 日産自動車 | 5159 |
4 | ホンダ | 3706 |
5 | マツダ | 1509 |
6 | 矢崎総業 | 1265 |
7 | アイシン精機 | 1109 |
8 | 豊田合成 | 922 |
9 | 豊田自動織機 | 840 |
10 | 日立オートモティブシステムズ | 808 |
表1 自動車・輸送機器業界 被引用特許件数ランキング2012 出典:パテント・リザルト |
表1の上位にある企業ほど、他社の技術開発の権利化をはねつける先行技術を多数保有していることになるのだという。調査対象は、2012年11月までに特許庁から公開された全ての公報。そのうち、2012年1〜11月末の期間において拒絶理由*1)として引用された公報を抽出した数を示した。自社特許による拒絶通知を除外するために、引用元の名義と拒絶通知を受けた公報の名義が異なるものについて企業別に集計したのだという。
*1) 特許庁の審査官は、出願された発明が特許となる条件を満たしているかどうかを実体審査の段階で判断する。その際、「産業上の利用可能性、新規性・進歩性等の要件」など、幾つかの項目を満たしていない場合、これを拒絶理由として、出願人に拒絶理由通知を送る。
表1にある上位企業はどのような強い特許を取得しているのだろうか。パテント・リザルトによれば、排ガス関連技術、燃料電池システム、プレス加工技術だ。
1位のトヨタ自動車は7680件の特許を引用されている。その中でも最も多く引用された公報は、「排ガス浄化フィルタ触媒及びその製造方法(特願2002-268245)」だ。公報には「PM浄化能をさらに向上させるとともに、圧損検出感度をさらに向上させ、かつNOX浄化能の耐久性を向上させる」とある。日本ガイシや日産自動車、米Corningなど8件の拒絶理由に引用されたという。
2位のデンソーは6101件の特許を引用されており、中でも「燃料電池システム(特願2003-336941)」が最も引用されている。公報には「発電を終了する際に燃料電池内に残留した反応ガスの影響によってカソード電極が劣化することを防止ないしは抑制する」とある。日立製作所やトヨタ自動車、日産自動車、住友化学など10件の拒絶理由に引用された。なお、デンソーの特許のうち、「車両用空調装置」や「カーナビ」「燃料噴射装置」などの技術が多く引用されているという。
3位の日産自動車は5159件の特許を引用されており、中でも「プレス加工による局部肉厚増加方法(特願2000-129658)」が最も引用された。公報には「フランジ部を直立成形して深皿状もしくはカップ状の成形品をプレス成形するにあたり、フランジ部の根元部に相当するコーナー部の肉厚寸法を相対的に厚肉化する」とある。引用された相手先の企業はNTNだけであり、同社の8件の出願に対する拒絶理由に引用された。
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