2012年11月14〜16日の3日間、下半期最大規模の組み込み関連技術イベント「Embedded Technology 2012/組込み総合技術展(ET2012)」がパシフィコ横浜で開催された。本稿では、今後、家電製品に搭載されていくとみられる最先端技術や、身近に触れる機会のありそうな最新ソリューションなどを多数の写真を交えて紹介する。
インテルのブースでは、自動車内でDLNA/DTCP-IPを使用した「コンテンツ共有システム」のデモンストレーション(以下、デモ)を行っていた。
日本では、海外に比べてレコーダーでテレビ番組を録画する文化が進んでいる。レコーダーに録画したテレビ番組を、家電AVネットワークガイドライン「DLNA(Digital Living Network Alliance)」と、著作権保護技術「DTCP-IP(Digital Transmission Content Protection-IP)」を通じて、セキュアな状態で転送できるスマートフォンやタブレット端末も数多い。
展示ブースでは、レコーダーからスマートフォンに転送したテレビ番組コンテンツを、DLNA+DTCP-IPを使って、カーナビゲーションシステム(以下、カーナビ)で再生するというデモを実演していた。録画したテレビ番組をDVDやBlu-ray Discに保存してカーナビで再生するという方法もあるだろうが、よりスマートに録画番組を楽しめるソリューションとして実現に期待したい。
ユビキタスのブースでは、2012年1月にDTLA(Digital Transmission Licensing Administrator:著作権保護技術「DTCP」や「DTCP-IP」の管理運用団体)によって策定されたDTCP-IPの最新仕様「DTCP+(DTCP-IP バージョン1.4)」に準拠するSDK(ソフトウェア開発キット)「Ubiquitous DTCP-IP」の展示デモを行っていた。
DTCP+では、ダビング10(デジタルテレビ放送の著作権保護に用いられるコピーガード)に対応した新しいコピーカウントを採用し、従来、家庭内のみに限られていたコンテンツ配信が同一ネットワーク“外”でも可能になった。ただし、デジタル放送の規格を定めているARIB(電波産業会)の規定や放送法などの制限があり、「現状では、デジタル放送の録画番組をインターネット上で視聴することはできない」と説明員は語る。だが、規格として既に策定されており、このようなSDKも配布されているため、規制やネットワーク帯域などの問題さえ解決すれば、すぐにでも実現できそうだ。
DLNAは、細かく規定された標準規格ではなく、さまざまな規格や仕様を組み合わせたガイドラインとなっている。このため、メーカー間や機器間の接続には、幾つかの制限や問題点がある。紹介したDCTP+のような規格が採用され、普及することで、今後さらに情報機器や車載機器、AV機器などが相互に活用されるようになるだろう。
アイティアクセスのブースでは、“音声電子透かし”を利用したセカンドスクリーンソリューション「SyncNow」を展示していた。セカンドスクリーンとは、映画のスクリーンやテレビ画面などを「ファーストスクリーン」として、それに関連する情報などを、スマートフォンやタブレット端末といった手元のデバイスの画面(セカンドスクリーン)に映し出すこと。
音声電子透かしとは、放送波などの音声に、コンテンツIDやタイムコードを電子透かしとして埋め込む技術のことである。イベント会場のBGMやアナウンスなどに埋め込めば、会場を訪れた人だけが見られるコンテンツを、スマートフォンやタブレット端末に表示するといったことが可能になる。
展示会場では、音声をタブレット端末で検知した場合には、動画(タブレット端末向けに最適化されたもの)を再生し、スマートフォンで検知した場合には、Webサイトを表示するというデモが行われていた。
例えば、テレビ放送に音声電子透かしを埋め込めば、視聴者のスマートフォンやタブレット端末に、テレビ番組に関連する情報を表示させたり、キャンペーン用Webサイトへの誘導を促したりできる。こうした活用は、海外で進んでおり、放送波に音声電子透かしを埋め込んで利用するケースも実際にあるという。しかし、日本では「現状、放送法により規制され、放送波に音声電子透かしを埋め込むのは難しい」(説明員)とのことだ。
テレビ放送での活用の道以外には、曲を聴くとその曲のミュージックビデオを再生したり、お店で使えるクーポン券を表示したりするといったプロモーションに使えそうだ。「『イベントなどで使いたい!』という引き合いが多い」と説明員は語っていた。
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