「ワゴンR」の燃費が新技術で28.8km/lに、時速13km以下でアイドルストップエコカー技術(2/2 ページ)

» 2012年08月09日 16時08分 公開
[朴尚洙,@IT MONOist]
前のページへ 1|2       

アイドルストップの最中にも冷風が

 ECO-COOLは、カーエアコンの主要部品であるエバポレータに、潜熱(融解熱)の大きいパラフィン系の蓄冷材を採用している。この蓄冷材は、エアコン動作時にエバポレータ周辺の気温が10℃以下になると固化する。固化した蓄冷材の周辺の気温が10℃以上になって液体状態に戻るときには、融解熱を吸収するので周辺が冷却される。

 一般的に、アイドルストップ機能により停車時などにエンジンを停止すると、エアコンは空調機能を停止して送風のみに切り替えるようになっている。夏場は車室内の気温がすぐに上昇してしまうので、エアコンで室内を冷却するため早々にエンジンを再始動しなければならなかった。

アイドルストップ時の「ECO-COOL」の動作イメージ アイドルストップ時の「ECO-COOL」の動作イメージ。蓄冷材が固体から液体に変化するときに周辺を冷却するので、冷風を車室内に送ることができる。(クリックで拡大) 出典:スズキ

 しかしECO-COOLを使えば、アイドルストップ中でも、固化した蓄冷材が液体に戻る際に周辺を冷却する効果を用いて冷風を車室内に送れる。この冷風によって車室内の気温上昇を抑えれば、アイドルストップ時のエンジン再始動時間を遅らせることが可能になる。

 なお、エアコンによる空調で蓄冷材を固化させる間、空調の効果が落ちるなどの影響はほぼないという。

新技術採用のアイドルストップで燃費を11%向上

「ECO-COOL」と従来のアイドルストップ搭載車の比較 「ECO-COOL」を使うと、従来のアイドルストップ搭載車よりもエンジン再始動時間を遅らせることができる。(クリックで拡大) 出典:スズキ

 新型ワゴンRのアイドルストップ機能は、これら2つの技術と組み合わせることで、エンジン停止時間を拡大している。「アルト エコ」や「MRワゴン」など、新型ワゴンRにも採用する「R06A型」エンジンを搭載した車両のアイドルストップ機能の場合、時速9km以下でエンジンを停止していた。これに対して新型ワゴンRは、時速13km以下からエンジンを停止する。ECO-COOLにより、停車中のエンジン再始動までの時間も伸びた。

 新型ワゴンRは、現行モデルと比べて燃費が22%向上しているが、このうち約半分は2つの技術を用いたアイドルストップ機能が貢献している。残りは、エンジンやCVT(無段変速機)の改良、軽量化、空力の改善などによるものだ。つまり、アイドルストップ機能によって、11%の燃費向上効果が得られた計算になる。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.