自動車のボディ電子システム向け32ビットマイコンである。90nmプロセスで製造したMONOS構造の内蔵フラッシュメモリを採用することで大幅な消費電流の低減を実現した。AUTOSARやISO 26262に対応するための機能も備えている。
ルネサス エレクトロニクスは2012年2月、自動車のボディ電子システム向け32ビットマイコンの新製品「V850E2/Fx4-L」を発表した。従来品と比べて動作時の消費電流を約1/3に低減しながら、最大動作周波数を約1.3倍となる64MHzに高めたことを特徴とする。BCM(Body Control Module)、オートエアコン、車室内照明システムなどさまざまなボディ電子システムに利用できる。内蔵のフラッシュメモリやRAMの容量、周辺機能、端子数が異なる19品種を用意した。サンプル価格は、内蔵フラッシュメモリの容量が1Mバイトで端子数が100本の品種で1500円となっている。2013年初旬から量産を始め、2013年12月には19品種の合計で量産規模を150万個/月まで拡大する計画。
V850E2/Fx4-Lは、同社が2010年11月に発表した32ビット車載マイコン「V850ファミリ」の第4世代品のうち、比較的高い処理能力を必要としないボディ電子システム向けに開発した製品である。プロセッサコアは、最大動作周波数が64MHzでシングルコアの「V850E2S」を搭載する。また、「RXファミリ」や「SuperHファミリ」などの32ビットマイコンで採用実績のある、90nmプロセスで製造したMONOS(Metal Oxide Nitride Oxide Silicon)構造のフラッシュメモリを内蔵することにより消費電流の低減を実現したという。
例えば、端子数が100本の品種の場合、動作時の消費電流は1MHz当たり0.35mAで、従来品の「V850ES/Fx3」の約1/3に低減している。一方、最大処理能力は、V850ES/Fx3の約1.3倍に当たる115DMIPS(Dhrystone MIPS)を達成した。また、プロセッサの動作を停止する「Deep STOPモード」は、デジタル入力ポートの入力レベルの変化を検出して即座にプロセッサやメモリを起動する機能を備えている。同モードの活用でさらなる消費電力の低減が可能になる。加えて、データ処理用に容量が32Kバイトのフラッシュメモリを内蔵しているので、EEPROMなどの外付け不揮発性メモリが不要である。
車載ソフトウェアへの採用が徐々に広がっているAUTOSARに対応するための機能拡張も盛り込んだ。AUTOSARに準拠した車載ソフトウェアのコードサイズは、従来のものよりも大きくなる傾向にある。そこでV850E2/Fx4-Lでは、内蔵フラッシュメモリの最大容量をV850ES/Fx3の1Mバイトから1.5Mバイトに増やした。最新バージョンのAUTOSARに対応したMCAL(Microcontroller Abstraction Layer)ソフトウェアも準備中である。この他、自動車向け機能安全規格ISO 26262に準拠した車載システムを構築できるように、システムレジスタ保護機能、メモリ保護機能、A-Dコンバータの自己診断機能などを搭載した。プロセッサコアの故障検出に利用できるセルフテストプログラムも提供する予定だ。
その他の仕様は以下の通り。CAN(Controller Area Network)インタフェースに加えて、LIN(Local Interconnect Network)として利用できるUART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)インタフェースを2〜5チャネル備える。これらLINインタフェースを制御するためにDMA(Direct Memory Access)チャネルをV850ES/Fx3の2倍となる8個に増やした。メモリ容量は、内蔵フラッシュが256K〜1.5Mバイト、RAMが24〜96Kバイトの範囲から選択できる。端子数は64本〜176本。動作温度範囲も、−40〜85℃、−40〜110℃、−40〜125℃から選択可能だ。
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