従来の電力会社主体のメガソーラー計画は一巡した。今後は固定価格買取制度(FIT)を狙ったメガソーラーが増えていく。香川県内に建設を予定する2カ所もFITが前提だ。メガソーラーの採算性を決めるのは何だろうか。
香川県は2012年2月13日、県内に設置を予定していた2件のメガソーラー(大規模太陽光発電所)の立地が決まったと発表した。いずれも2012年内に営業運転を開始する予定だ。
香川県は瀬戸内海に面しており、年間日照時間は約2050時間、これは全国11位の値だ。降水量が少ないため、小麦栽培に適しており、有名な「讃岐うどん」が生まれた。つまり、日照条件からはメガソーラーの適地だといえる。
四国にはメガソーラーが既に2カ所ある*1)。今回は、国の「再生可能エネルギー推進特別措置法」による全量固定価格買取制度(FIT)を前提としたメガソーラーである。四国では同制度を狙った初の計画であるという。発電した電力は全量四国電力に販売する予定である。
*1) 1つは今治造船の多度津事業所(香川県多度津町)の工場屋根に、約1.3MWの太陽電池モジュールを設置したもの。2011年3月に完成し、自社使用を目的とする。もう1つは四国電力が運営する松山太陽光発電所。2010年12月に出力を従来の300kWから2MWまで増強した。2020年度までにさらに2.3MW分を追加する計画だ。
新しいメガソーラーの立地は、坂出市と三豊市(図1)。坂出市では、総社塩産が所有する瀬戸内海に面した3万2000m2の敷地を使い、最大出力2MWのメガソーラーを建設する。2012年7月の稼働開始を予定する。発電事業者として、国際航業ホールディング(または同社の関連会社)の名前が挙がった。
三豊市では、農事組合法人旭ヶ丘産業が所有する3万m2の土地に最大出力2MWの発電所を建設し、2012年9月の稼働開始を予定する。発電事業者はオリックス(または同社の関連会社)が内定している。現場は内陸部だが、元養鶏場であり、造成の必要はなく現在はさら地になっているという*2)。
*2) 香川県によれば、造成が必要な土地は初期投資額がかさむため、メガソーラーを狙う企業には人気が薄いという。
今回の計画は明るい話題ばかりではない。国際航業ホールディングス、オリックスとも事業としてメガソーラーを推進している。毎年の収入は電力の買取価格で決まるため、ここが未確定の段階では、将来の見通しが不透明なまま事業を進めることになる。メガソーラーの建設予定地はいずれも民有地であり、賃貸借の契約も買取価格いかんでは成立が難しくなる。このため、両社とも土地の賃貸借の基本合意書を締結する段階でいったん状況を見守る形だ。
「工期の想定期間は3カ月、全量固定価格買取制度が始まる7月に稼働を開始しようとすると、3月中に買取価格が明らかにならなければ間に合わない」(国際航業ホールディングス)。オリックスも、買取価格が決まらなければ建設計画が進まないことを認めている。
このような状況は他のメガソーラー計画にも共通している。例えば三井化学や東芝など6社が愛知県田原市に計画する「たはらソーラー・ウインド共同事業」(太陽光50MW)でも、「買取価格があまりにも低い場合は、事業化しない選択肢もある」というコメントが関係者から漏れたほどだ(関連記事)。
今回の計画はどちらも最大出力が2MWだ。なぜだろうか。
「2MWまでは電柱に架かる6600Vの電線を通じて、系統と連系できる。しかし、これを超えると特別高圧に対応した鉄塔が必要だ。鉄塔脇の土地であれば問題ないが、そうでなければ新しく建設しなければならない。さらに出力が増えると電圧調整装置の費用も掛かる」(香川県)。これは資源エネルギー庁が2004年に公開した「電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドライン」(PDF)による制限だ*3)。
*3) 1設置者あたりの電力容量が「原則として2000kW(2MW)未満」の場合は、「高圧需要家に電力を供給する役割と、配電用変電所から柱上変圧器等を介して低圧需要家に電力を供給するまでの役割」を備えた高圧の配電線(三相3線式:6.6kV)でよい。しかし、原則1万kW(10MW)未満では、「2回線以上の22kV又は33kW特別高圧地中電線路から需要家がそれぞれの回線ごとに施設した変圧器の2次側母線で常時並行受電する配電線」が必要になる。
例えば、2.5MWというメガソーラーは2MWに比べて初期投資の面でかなり不利になるということだ。オリックスによれば、広い土地を確保し、出力を10MWに拡大できれば採算が採れるようになるという。
この他にも立地条件はある。例えば、系統に与える電圧変動だ。メガソーラーの出力が同じであっても、系統のどの部分に接続するかによって、系統側に与える影響は異なる。影響が小さくなる土地が有利だ。
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