これらの指摘を受けて、1995年に発表された「電力中央研究所報告 発電システムのライフサイクル分析 研究報告:Y94009」(公開資料)の中では、太陽光発電のエネルギー収支が大幅に見直されている(図3)。この資料18ページにある「図11 発電システムの化石燃料消費量」では、1kWhの電力を生み出すにはどれぐらいの化石燃料が消費されるかの比較している。これによれば太陽光(家庭用)は石油火力・石炭火力に匹敵する効率であり、逆に火力発電の燃料分はグラフをちぎらないと図中に収まらないほどコスト高であることが分かる。
家庭用の太陽光が電気事業用に比べてかなり高効率になっているのは、パネルを支える架台の大部分のコストを、既に存在する「屋根」などが賄うからだと考えられる。今から18年前の調査でさえ、家庭用太陽光発電には将来、石油・石炭に変わるエネルギープラントとなる可能性があることを示している。
近年の数値はどうなっているのだろう。太陽光発電のペイバックタイムを調査した例として、みずほ情報総研が2009年にまとめた「平成19年度〜平成20年度成果報告書 太陽光発電システム共通基盤技術研究開発 太陽光発電システムのライフサイクル評価に関する調査研究報告書」(PDF)*4)がある。PDFで271ページにも及ぶ膨大な検証結果だが、太陽電池の全方式について、あらゆるコストを算出してEPTとCO2PTを割り出している。
*4) リンクでは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の成果報告書データベースのトップページを示した。ユーザー登録後、成果報告書検索をクリックし、検索画面の「管理番号」に「20090000000073」と入力して検索すると、報告書本文のPDFをダウンロードできる。
これによれば、量産効果および電池の種類で違いがあるが、年産規模10MWでEPTは1.2〜3.1年、CO2PTは1.7〜3.8年。年産規模100MWではEPTが0.9〜2.1年、CO2PTが1.4〜2.4年となっている(図4)*5)。
*5) 太陽光発電協会によれば、国内30社の年産合計出荷量は、2530MW(2011年度)である。つまり平均的な国内メーカーの生産量は84MWという計算になる。
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