リーフのリチウムイオン二次電池は、繰り返し使って容量が70%まで低下した時点で寿命となる。ただし、寿命に達した後もさまざまな用途で利用できる。電気自動車(EV)が内蔵する電池の量は非常に多い。寿命に達した電池をどう使うか。今後EVが伸びていくに従い、再利用技術が重要になっていく。
電気自動車(EV)は大量のリチウムイオン二次電池を使う。例えば日産自動車の「リーフ」が内蔵する電池容量は24kWh(図1)。これは携帯電話機の電池に換算すると約1万個分にも相当する。
リチウム資源は供給が限られており、今後EVの生産台数が増えるにつれて次第に入手が容易ではなくなる可能性がある。例えば米エネルギー省(DoE)が2011年12月に公開した「2011 Critical Materials Strategy」*1)によれば、16種類の戦略元素のうち、リチウムは2015年までの短期において、重要性は4段階の2、供給リスクは4段階の1と低いが、2015〜2025年の中長期においては、重要性が3に上昇する一方、供給リスクが2のまま下がらない。
*1) 薄膜太陽電池や風力発電機のタービン、電気自動車(磁石、電池)、LED照明など重要なクリーンエネルギー技術に必要な16種類の元素について分析した。
このような予測があるため、EV用リチウムイオン二次電池を再利用する取り組みが重要だ。その際、2種類の手法が考えられる。まずは回収したEV用電池を破砕して、すぐにEV用電池の原料として使うことだ。もう1つは、回収したEV用電池を別の用途に使ってからリチウムを取り出す取り組みだ。
リチウムイオン二次電池は、何度も充放電を繰り返すと次第に電池容量が下がっていく。電池容量は1充電当たりの走行距離に直結するため、EVでは電池容量が70%に下がった時点で「寿命」と見なして交換する。
寿命に達した二次電池は電池として十分機能する。単に容量が下がっただけだからだ。容量が70%に下がった電池であっても、3個使えば元の電池2個と同じ容量になる。重量や体積に制限があるEVでは、電池の搭載個数を増やす取り組みは現実的ではないが、定置型用途であれば問題ない。寿命だと見なされた電池であっても、商業・産業用蓄電システムやバックアップ電源では十分利用できる。
Nissan North America(北米日産)は2012年1月19日、電力技術大手のスイスABBやフォーアールエナジー*2)、Sumitomo Coporation of America(米国住友商事)とパートナーシップ契約を締結した。
*2) フォーアールエナジーは、日産自動車と住友商事が設立した合弁企業。リチウムイオン二次電池の4R(Reuse:再利用、Resell:再販売、Refabricate:再製品化、Recycle:リサイクル)に取り組む。2011年7月にはリーフ4台分の電池(96kWh)を出力40kWの太陽電池と接続したEV充電システムの実証実験を開始している。
リーフの電池を北米市場で二次利用する事業の事業化検討が目的だ。市場ニーズの調査やビジネスモデルの検討、試作システム開発を通じて、実証試験や事業性評価につなげていく。
パートナーシップ契約に基づいた事業として、使用量の少ない時間帯に系統から電力を貯蔵し、需要の多い時間に戻す、いわゆる電力の「ピークカット」を試みる。この他、風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギー導入に役立てるという。いずれもスマートグリッド確立に欠かせない技術だ。
プロトタイプモデルとして、まず容量50kWhのものから検証する。これは平均的な北米の家庭30軒に電力を1時間供給できる容量だ。
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