一戸建てであればEV導入はたやすい。だが、マンションでは制約がある。そこで、三菱自動車とオアシスソリューション、サイトレックは、「マンション+EV」という条件で、カーシェアリングサービスを立ち上げた。1台分の駐車スペースがあれば導入できる手軽さが売りだ。
買い物や大きな荷物を運ぶために時々車を使いたい、という要望は切実だ。都市圏では公共交通機関が発達しているため、「車が無ければ生活できない」ということはないが、やはり車は使いたい。カーシェアリングが役立つのはこのような場合だ(関連記事:パリがEV先進都市に変身、3000台のシェアリングに取り組む)。
一方、都市圏では住環境に制約がある。マンションが広く普及しており、首都圏ではマンション化率*1)が平均2割を超えている。近畿圏でも平均15%近い。
*1)総世帯数に占めるマンション戸数の割合を指す。数値は東京カンテイが公開した2009年のマンション化率。
このような地域で未利用地を借り上げ、カーシェアリング用の設備を導入すると、導入コストがかさみ、事業性が低くなる。どうすればよいだろうか。
マンション専用のカーシェアリング、それもEVに特化したカーシェアリングというサービス形態があり得る。EVであれば給油の問題がなく、カーシェアリングに向く。近距離・短時間の用途が中心ならEVの走行距離は問題にならない。
三菱自動車とオアシスソリューション、サイトレックは、2011年11月22日、マンション向け電気自動車(EV)専用カーシェアリングシステムを共同開発したと発表した。2012年1月中旬から「MiEV SHARE SYSTEM」(仮称)として、オアシスソリューションが販売を開始する。三菱自動車は充電に関するデータを提供し、プロモーションを手掛ける。オアシスは運用や清掃などを担当し、サイトレックがITシステムの設計、カスタマイズを担う。
3社は、「マンションとEV」という条件でカーシェアリングサービスを提供する。マンション敷地内にカーシェア用の「貸し出しステーション」を設け、マンション居住者がEVをシェア利用する。「貸し出しステーションといっても、1台分の駐車スペースがあればサービスを提供できる。植栽や共用部を転用してもよい。事前に必要なインフラはマンションであれば必ず利用できる200Vの電源だけだ」(オアシス)。
「新築マンションはもちろん、既築マンションでも導入できる。最小導入単位は1台のEVと駐車スペース、小型充電スタンド、キーボックスの組み合わせであり、この場合導入価格は440万円*2)である」(オアシス)。
*2)EV(i-MiEVまたはMINICAB-MiEV)や機器の所有権はオアシスやリース企業が持ち、マンション管理組合は使用権を確保する形になる。納入前に予約画面やマンション内の利用者向けに画面上で提示する料金をカスタマイズ可能だ。
MiEV SHARE SYSTEMの全体像は図1の通り。利用者の視点でシステムを見ると、ごく単純な構成である。まず、PCや携帯電話機からインターネット経由でEVの予約画面を操作し、利用日時を入力する。
予約時間になると、貸し出しステーションのキーボックス(図2)にアクセスできるようになる。暗証番号を入力後、EVの鍵を取り出して使う。EVの利用後、キーボックスに鍵を返すことで1回の貸し出しが完了する。このような仕組みを採ったことで、将来はEVだけでなく二輪車や自転車など複数のシェアリングサービスに拡張できるという。
これまでもガソリン車用のシステムをEVに転用したシステムは存在していた。今回のシステムの特長は、EVに特化していることだ。例えばEVの予約時点とEVの充電時間の関係をシステム側で管理する、EVの返却時に充電操作を行わないと警告を発するなどの仕組みを組み込んだ。
なお、三菱自動車は、「東京モーターショー2011」(2011年12月2〜11日、東京ビッグサイトで開催)で、MiEV SHARE SYSTEMを展示する予定である。
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