全市民がガソリン車を保有すると利便性は高まるが、デメリットも大きい。理想的な都市交通サービスがあるとすれば、二酸化炭素を排出せず、低コストでいつでも利用できるという形になるはずだ。EVなどを利用した千葉県柏市の取り組みを紹介する。
公共交通サービスのCO2(二酸化炭素)排出量を引き下げつつ、費用をかけずに利便性を高めたい。東京大学工学系研究科精密工学専攻の教授である淺間一氏(図1)が、千葉県で「柏の葉・流山いろんな乗り物 街乗り! シェアリング実証実験」を進める理由は単純だ。
この取り組みは柏の葉キャンパスシティITコンソーシアム(KACITEC)が主催し、つくばエクスプレス沿線の柏市や流山市などが協力して2011年6月28日から同7月5日まで実施するプロジェクトだ*1)。市民を中心に120人のモニターを募る。今後実証運行を重ねて事業性を確認後、2012年度にはサービスを独立させることを見込む。
*1)総務省の平成22年度「地域ICT利活用広域連携事業」として実施する。実証実験に協力するのは、柏市と流山市、柏市都市振興公社、柏の葉アーバンデザインセンター(UDCK)、東京大学大学院新領域創成科学研究科、柏ITS推進協議会、三井不動産、ららぽーと柏の葉、メルセデス・ベンツ日本、トヨタ自動車、ヤマハ発動機、トーマス、サイカパーキング。アスクが運営する。
地方自治体は、交通サービスを提供する企業と共に、長年、公共交通サービスの充実に努めてきた。一般乗り合いバスやレンタサイクル、レンタカーが代表例であり、カーシェアリングの普及も進んでいる。これらの個々の取り組みには成功しているものも多い。例えば柏市は2010年4月から300人の登録者を募り、26台の自転車と6台の駐輪場を使ったコミュニティサイクルの社会実験を続けている。利用実績は500回/月に上り、これは同様の試みを始めた他の7つの自治体と比べて1.2倍〜20倍も高い利用率である。
「今回の社会実験が従来の同様の試みと異なる点は、電気自動車(EV)や自転車など複数のサービスを同じユーザーインタフェース(UI)を使って横断的に予約利用できることだ。このような取り組みは世界初である」(淺間氏)。
複数のサービスを共通のUIで提供すると、貸し出し限度を超えていて例えばEVの予約ができなかったとき、他の選択肢が残っている。これまではこのようなサービスが無かったため、ユーザーがどのような選択をするのかは分からない。さらに、複数のサービスを提供することで、CO2の排出量はどの程度削減できるのか、自家用車を購入する替わりに、このようなサービスを利用するような動機付けになるのかどうか、といった効果を実証実験で調べる。
この他、ユーザーごとに、いつ、どこからどこまで、何を使って移動したかという履歴を取ることで、年齢や性別、天候、曜日などユーザーの属性によってどのような移動手段を選ぶかを統計的に解析できるようになる。サービスを立ち上げる前と後で、地域内の移動パターンがどのように変化するのかも確認できる。このようなデータを集めることで、柏市内でサービスを拡大する際の指針とするほか、他の都市にサービスを展開しやすくする。システム全体をクラウド上に構築しているため、他の自治体に横展開しやすいという。
だが、このようなサービスは高価に付きやすいという欠点がある。今回の社会実験ではコストを削減するこれまでにない取り組みも盛り込んだ。
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