ホンダは電気自動車「フィットEV」の市販車をロサンゼルスショーで公開した。北米仕様EVであり、電費性能では世界一だと主張する。その一翼を担うのが東芝のSCiB電池だ。
ホンダは電気自動車「フィットEV」を「Los Angeles Auto Show」(2011年11月16〜17日、ロサンゼルスで開催)で公開した(図1)。公開したのは北米仕様の市販車。
2011年内にフィットEVの実証実験のパートナーであるカリフォルニア州トーランス市やスタンフォード大学、Googleに納車する。2012年夏には米国でのリース販売を開始。3年間で約1100台の販売を計画する。
なお、日本市場でも2012年中に販売を開始する。中国では2012年にEVの生産開始を検討しているが、販売については未定だ。欧州市場の予定も決まっていない。
ホンダは北米仕様のフィットEVを発表するにあたり、「世界最高の電費性能を達成した」と主張する。1充電当たりの走行距離は123マイル(LA-4モード:unadjusted)、76マイル(Combined city/hwy:adjusted)である*1)。123マイル(198km)の性能を実現した理由の1つが搭載する二次電池だ。今回、ホンダは東芝の「SCiB」を採用した*2)。
*1) 2010年のLos Angeles Auto Showで出展した「フィットEVコンセプト」の走行距離は100マイル以上(LA-4モード)としていた。なお、日産自動車のEV「リーフ」の電費は、JC08モードでは200kmだが、LA4では100マイル(160km)である。
*2) 東芝のSCiBが市販車に採用された事例としては三菱自動車の「i-MiEV」(Mグレード)に次ぐ、2例目である。i-MiEVに採用されたSCiBはフィットEVと同じ20Ahセルだ。
東芝によれば、採用された二次電池セルは「SCiB 20Ahセル」(図2)。体積エネルギー密度が176Wh/Lと高い。ホンダによればフィットEVの二次電池モジュールの容量は20kWhなので、1台当たりSCiBセルを約400個使っている計算になる。
東芝は、これまでもEV用二次電池でホンダと協力してきた。例えば、ホンダが2010年12月から埼玉県や熊本県と協力して実施している「次世代パーソナルモビリティの実証実験」では、実証試験車両へSCiBを提供している。フィットEVに搭載するSCiBについてもホンダと共同で電池モジュールを開発した。東芝によれば、SCiBの優れた長サイクル寿命など、さまざまな使用環境における電池性能が*3)、総合的に評価されたことが、採用につながったのだという。
*3) SCiBは負極にLiTiO3(チタン酸リチウム)を採用したことで、急速充電性能や長寿命性能を実現している。パワー密度が高く、回生受け入れ特性が優れているため、車両の電費が向上し、走行距離が延びるという。
EVではユーザーによる充電操作が頻繁に必要だ。さらに空調による電力消費を抑えるため、駐車中に空調を起動する使い方が好まれる。そこで、フィットEVではスマートフォンやPC以外に「EV双方向リモコン」を使った操作を取り入れた(図3)。
EV双方向リモコンは2つのボタンを備える。チャージとクライメートだ。充電器に接続されているときにチャージボタンを押すことで、充電の開始、停止ができる。クライメートボタンも同様だ。「リモコンは微弱な電波を使っており、30m離れたところから操作できる。充電操作は日常よく使う機能であるため、専用のリモコンを用意した」(ホンダ)。通信機器がなくても使えるというメリットもある。
なお、二次電池の容量があらかじめ指定した量よりも下がったときにメールを送信する機能や、タイマー充電機能は、スマートフォンやPCでのみ設定できる。
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