2011年10月、ルネサス エレクトロニクスと東芝はそれぞれ、車載機器向けの画像認識SoC(System on Chip)の新製品を発表した。新製品の名称はルネサスが「SH7766」、東芝が「Visconti2(TMPV7500)」である。両製品とも、自車両を上から見下ろす視点で周辺の映像を表示する駐車支援機能であるトップビュー(サラウンドビュー)向けに最適化されている。
SH7766(図1)は、ルネサスとルネサスの子会社であるルネサス モバイルが開発した。2011年11月から、単価5,000円でサンプル出荷を開始する。量産開始は2013年9月を予定。2014年9月時点での量産規模は月産10万個が目標である。パッケージは、外形寸法が21mm角で、端子数が440本のBGAを採用している。
SH7766は、同社が2007年9月に発表した画像認識SoC「SH77650」との互換性を維持しつつ、性能向上を図った製品である。特に、視点変換のための画像処理エンジン「IMR(Image Renderer)」や、輝度補正の際に用いるダイナミックレンジコントロール、2Dと3Dのグラフィックスエンジン(3Dはオプション)などのハードウェア回路を搭載することにより、画像表示を行う機能を強化している。
また、画像認識処理IP(Intellectual Property)としては、次世代エンジンである「IMP-X2」を搭載している。IMP-X2は、現行の画像認識処理IPである「IMP(Image Processing Engine)」とライブラリ互換を保ちながら、処理性能は約4倍以上を達成している。人や自動車の区別など、判断系の処理を多用する画像認識アルゴリズムを用いる場合は、インテグラルイメージの生成など新たに追加した機能と、1チップに集積している動作周波数534MHzのプロセッサコア「SH-4A」の処理判断との連携によって、低消費電力かつ高度な画像認識を実現できるという。
さらに、ビデオ入力端子を6チャネル搭載している。これらのうち4チャネルはNTSC方式のアナログ映像をデジタル信号に変換するためのA-Dコンバータを内蔵している。つまり、4個の車載カメラから出力されるNTSC方式のアナログ映像信号を用いることが多いトップビュー機能を1チップで実現することが可能だ。さらに、残りの2チャネル分のビデオ入力を用いれば、走行レーン維持システムなどの画像認識システムの機能も、同時に組み込むことができる。
一方、東芝のVisconti2(図2)も、2011年11月からサンプル出荷を開始する。サンプル価格は、ビデオ入力が4チャネルの「TMPV7506XBG」が6000円、ビデオ入力が2チャネルの「TMPV7504XBG」が4000円である。量産開始は2012年9月から。量産規模は、TMPV7506XBGが年間50万個、TMPV7504XBGが年間100万個。パッケージは、両品種とも外形寸法が27mm角で、端子数が516本のBGAを採用している。
Visconti2は、2004年に発表した「Visconti」の後継品である。Viscontiでは、動作周波数150MHzの画像認識エンジン「MPE(メディアプロセッシングエンジン)」3個と画像処理アクセラレータ1個で画像認識を行っていた。これに対して、Visconti2は、動作周波数266MHzの「MPE」を4個と画像処理アクセラレータを最大6個搭載している。このため、従来よりも高性能な画像認識が可能になるとしている。また、TMPV7506XBGの画像処理アクセラレータは、明るさの変化の影響を受けにくい、輝度勾配方向ヒストグラム(HOG)特徴量を基にした処理を行う機能を有している。これにより、人物検知をより高い精度で行うことが可能になるという。
ビデオ入力が4チャネルのTMPV7506XBGは、入力された映像の視点を変換するための画像処理アクセラレータや、自車両を模擬した画像と4つのカメラ映像を合成して表示するビデオ出力インタフェースも搭載している。このため、トップビューの実現が容易だとしている。ただし、各入力チャネルは、NTSC方式のアナログ映像をデジタル信号に変換するためのA-Dコンバータを内蔵していない。このため、トップビューを構成する際に、NTSC方式のアナログ映像を出力する安価な車載カメラを用いる場合は、外付け部品としてA-Dコンバータが必要になる。
その一方で、Visconti2は、最大130万画素のカラーカメラとの接続に対応している。これにより、画素数が最大でも40万画素程度の現行の車載カメラを用いる場合よりも物体の認識精度の向上を図れるという。なお、従来品のViscontiはグレースケールカメラにのみ対応しており、カラーカメラは接続できなかった。
また、TMPV7506XBGは、カーナビゲーションシステムのメインプロセッサとの連携をはじめとする拡張性を確保するために、PCI Expressインタフェースを1レーン分搭載している。
(朴 尚洙)
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