SolidWorks 2012では、ユーザー要望に基づく数多くの新機能・機能改善が盛り込まれた。旧バージョンの2011と作業時間を実際に比較した結果も公表。
ソリッドワークス・ジャパンは2011年9月27日、同社の3次元設計ツール新製品「SolidWorks 2012」に関する日本向け発表会を開催した(同年9月7日に米国で先行発表)。同製品は、コスト見積もり(Costing)機能、「大規模デザインレビュー」機能、製図機能の改良、「フィーチャーフリーズ」機能などを盛り込んだ。
今回は、「より優れた操作性と設計機能の利便性向上」「さらなるパフォーマンス向上による開発製品の品質強化」「生産性と設計検証プロセスの効率化」の3テーマに基づき新機能追加および改善を行った。
特に日本ユーザーから熱心な要望が多いという2次元製図機能だが、今回も幾つか改良し、作業時間の大幅短縮が望めるとした。SolidWorks 2012では、「3DVIA Composer」のマグネットライン機能(任意のラインにバルーンを等間隔配置する)を製図機能に導入。この機能では、一括整列、バルーンの一括並び替えが可能だ。バルーンを違うマグネットラインに乗せ換えることも簡単にできる。
同社による製図作業(組み立て図作成)のテストの結果、SolidWorks 2011では2分24秒掛かっていた作業が、2012では1分32秒で済み、大幅な製図工数削減が見込めるとしている。
今回、大規模データのパフォーマンス改善も大きなトピックだ。大規模デザインレビュー機能では、1万点ほどのアセンブリも数秒で開け、3次元ビュワーを用意したり、ビュワー用にデータを作成したりしなくても、そのままデザインレビューで利用できるとしている。デザインレビューと並行しての設計変更も実現可能だ。
同社では以下のプロセスで作業時間を2012版と2011版とで比較したが、56%の工数削減を確認したという。
2011で断面を表示している間に、2012では既に内部部品の編集が完了している状態だ。タイムは2011が2分55秒、2012が1分27秒だった。
新機能のフィーチャーフリーズは、特定のフィーチャーを再構築するかしないかを制御できる。従来は、小さな1カ所を修正しただけなのに、修正に直接関係がないほかのフィーチャーまで再構築された。それがこの機能では、更新が不要なフィーチャについてはフリーズしておくことが可能ということだ。フリーズの解除もいつでも可能で、処理によって設計意図が失われることはない。2012版によるフィーチャーフリーズ利用の作業と、2011版の従来プロセスによる作業時間を比較した場合、2012では1分17秒、2011では4分36秒掛かり、72.1%の工数削減を確認。従来は、不要な箇所の再構築にストレスを感じるユーザーは、外部参照のモデルを取り入れるなど、再構築させないモデルを作って対処してきた。
SolidWorks 2012ではコスト見積もり機能(Costing)を追加。モデリングした形状の加工プロセスを割り出し、加工コストを自動で見積もる機能だ。現在は、板金加工、機械切削加工の2種に対応している。自社独自の加工法やコストテーブルなどは、カスタム機能で対応可能。Word形式のレポートも自動生成できる。「アセンブリ可視化」(フィーチャツリー内の任意のアセンブリを色分けする)を併用すれば、高コストなモデルを色分け可能だ。現状では相対比較用途のツールだが、米ダッソー・システムズ・ソリッドワークス(以下、米ソリッドワークス)では重要視している機能であり、今後の機能拡張や結果の精度向上に期待してほしいという。
機構解析(Motion)には、最適化機能を追加。“動く”部品に対し、条件(動作制限など)の候補を1回決めてしまえば、後はソフトウェアが自動的にその機構部品の変更案を幾つか作成し、最適解を導き出す機能だ。
今回は、「コマンド検索」の機能が付いた。「穴」「平面」などキーワードを入力することで、機能の候補を表示する。
地味な機能ではあるが、久しぶりにCADを使う人などが、新しいアイコン配列が分からずコマンドをうまく探せないといった事態では活躍しそうだ。
「Enterprise PDM」では、ファイル展開の画面から検索機能が利用可能だ。従来は、ファイルを展開する前に検索機能を開いて探していた。“なくては非常に困る”機能ではないものの、ファイルを展開する段階で検索できることで、設計者の思考プロセスの中断を防げると同社。Windowsのエクスプローラ上でコマンド表示をカスタム化でき、例えば「プレビューと承認だけできればいい」という仕様の画面も作成可能だ。
3DVIA Composerの新バージョン「V6R2012」では、「グロー」(光沢:フラッシュのような効果)、「ぼかし」など新たな効果を追加。「高度なレンダリングは時間がかかって面倒なので不要だが、3次元CADのシェーディングでは不満」といった場合、グローを利用することで、適度な品位を持ったシェーディング画像を手早く作成できる。また、ウォークスルーの機能も、従来と比べスムーズな動きになった。
GaBi(PE International社)のデータを利用した環境設計支援ツール「SolidWorks Sustainability 2012」では、GaBiの更新があるたびにリアルタイムでアップデート可能とした。従来は、SolidWorksのアップグレードごとで更新していた。また、GaBiに材料追加のリクエストも送信できる。
米ソリッドワークス本社が2008年から実施するSolidWorksの新バージョンβ版評価は、コンテスト形式で実施している。全世界では数千人、日本のユーザーは約90人が参加しているとのことだ。特にここ数年で、日本人ユーザーが貢献者(有効な機能リクエストをポイント加算する)リストの上位で目立つようになったという。現在進行中のβテストの正式な結果発表はまだだが、2011年9月6日夜間(途中経過)では日本人数人の上位ランクインが確認できているとのことだ。
「1995年、Windows 95の時代に米ソリッドワークスは設立されました。(CADを動かすハードといえば)UNIXが主流でしたが、そこで設計者のデスクトップでもCADが使えるように、当時からすれば大変なことにチャレンジしました。でも、それが設計者に受け入れられ、こうして20個目のリリースとなりました。『お客さまの声が第一』。どのメーカーも必ず言います。『無視していい』なんていう社長、私は見たことはありません。この業界に限らず。『本当にそうなっているのか』が大事です。今回も200を超える機能強化をしました。その中のTop 10のうち7つが日本ユーザーからの要望が反映されています。製造業のお客さまの多くは(経済的に)厳しい状況です。お叱りも多くいただきますが、『いい物だから、もっとよくなる』という声だと受け止めています」(ソリッドワークス・ジャパン 代表取締役社長の大古俊輔氏)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.