あらゆる“壁”を越えた円滑なコミュニケーションを実現、IBM Rational新製品開発生産性とソフトウェア価値の向上へ

日本IBMは、Rational製品の新ラインアップとして、コラボレーティブ・ライフサイクル・マネジメントを実現する3製品の新版と、コラボレーティブ・デザイン・マネジメントを実現する2つの新製品を発表し、同日出荷を開始した。

» 2011年07月06日 18時06分 公開
[八木沢篤,@IT MONOist]

 大規模・複雑化するソフトウェア開発プロジェクトの現場では、プロジェクトの工期が予定よりも遅延したり、手戻り作業の発生によりコスト超過を余儀なくされたりといった問題が発生するケースが少なくない。こうした状況を作り出す原因の1つが、“壁”である。開発工程の壁、組織の壁、地域の壁、ツール・インフラの壁……。これらが、プロセス間の迅速な連携や人と人とのコミュニケーションを阻害し、ソフトウェア開発の生産性の低下をもたらしてしまう。

 また、ソフトウェアは機能やサービスを実現するだけでなく、性能や品質をも左右する差別化要因としての役割も担う。それだけに、開発現場にとって、生産性の向上、ソフトウェアの価値向上は非常に重要な取り組みといえる。

 日本アイ・ビー・エムはこうした課題を解決し、ソフトウェアの価値向上を図るためのあるべき姿として、“統合されたコラボレーティブなALM(Application Lifecycle Management)”を提唱する。ALMは、ソフトウェア開発ライフサイクルの全てのフェーズをツールを用いて統合管理し、開発全体の最適化、生産性と品質向上を図ろうという手法だが、同社は、ここに、各プロセスで発生した情報の連携だけでなく、人の関係もアドオンして統合的に管理することで、タイムリーな情報共有とコミュニケーションの円滑化をもたらし、情報・作業の分断やコミュニケーションンミスによる手戻り発生の低減を図る考えだ。

開発のあるべき姿 開発のあるべき姿 ― 統合された、コラボレーティブなALM
日本アイ・ビー・エム 理事 ソフトウェア事業 ラショナル事業部 事業部長 渡辺公成氏 日本アイ・ビー・エム 理事 ソフトウェア事業 ラショナル事業部 事業部長 渡辺公成氏

 こうした考えの下、同社は2011年7月6日、「要求」「開発」「テスト」といったソフトウェア開発のライフサイクル全体で、チームメンバー同士が成果物や進ちょく状況を共有しながら作業を進める「コラボレーティブ・ライフサイクル・マネジメント(CLM)」を実現する3つの製品の最新バージョンのリリースと、「設計」に関する情報を開発メンバー同士で共有する「コラボレーティブ・デザイン・マネジメント(CDM)」を実現する2つの新製品を発表し、出荷を開始した。同日行われたプレス向け説明会では、同社 理事 ソフトウェア事業 ラショナル事業部 事業部長 渡辺公成氏が登壇し、新製品の詳細および販売施策についての説明を行った。

 CLMの実現に向け、今回、要求定義を改善・効率化する「IBM Rational Requirements Composer」、作業管理や構成管理を行う「IBM Rational Team Concert」、テスト管理と品質管理を行う「IBM Rational Quality Manager」の3製品の最新バージョン“3.0.1”をリリースし、それらをシームレスに統合。1つの画面上に要求、開発、テストに関する情報を集約し、リンクをたどる感覚で直観的かつ迅速にほしい情報にアクセスすることができる。

1つの画面上に要求、開発、テストに関する情報を集約ソーシャル・ネットワークを活用 コラボレーティブ・ライフサイクル・マネジメント(CLM)のデモ

 これにより、関連メンバーが開発ライフサイクルの各プロセスのデータにアクセスすることが可能となり、必要な情報への迅速なアクセスや、関連する情報およびその情報の背景などの共有・理解により、プロセスや組織、地域の壁を越えた円滑なコミュニケーションをもたらし、作業の生産性が向上できるという。また、ソフトウェア開発ライフサイクル支援ツールなどを統合・連携するためのオープンなインタフェース「OSLC(Open Services for Lifecycle Collaboration)」を活用することで、他のオフィスツールやソフトウェアとの連携も可能となり、CLMの拡張も可能だ。さらに、IBM Rational Team Concertに、ソーシャル・ソフトウェア「IBM Connections」の機能を統合することで、「ソーシャル・ネットワークを活用した関係者以外とのコミュニケーションも実現できる。エンドユーザーから意見や要望をフィードバックしてもらい開発に役立てることもできる」(渡辺氏)という。

 一方、設計に関するあらゆる情報を統合し、関係者間で共有・可視化することで、コミュニケーションの円滑化や設計開発の効率化および品質向上を図るCDMを実現するツールとして、今回、組み込み開発向けの設計管理ツール「IBM Rational Rhapsody Design Manager V3.0」および、IT開発向けの設計管理ツール「IBM Rational Software Architect Design Manager V3.0」の2製品を新たに発表。Webブラウザ経由で、設計情報を確認したり、リアルタイムに設計情報のレビューや指示出しをしたりなど、地域を問わず適時に設計情報のすり合わせが行えるため、品質向上が見込めるという。また、OSLCにより、CLM側の各種ツール群との連携も容易で、設計に対して、要求、開発、テストに関する情報をひも付けることができる。

CDMのデモ(1)CDMのデモ(2)CDMのデモ(3) コラボレーティブ・デザイン・マネジメント(CDM)のデモ

 各製品の価格は、以下の通りだ。

製品名 価格
IBM Rational Requirements Composer V3.0.1 61万9200円〜
IBM Rational Team Concert V3.0.1 62万2100円〜
IBM Rational Quality Manager V3.0.1 75万7900円〜
表1 コラボレーティブ・ライフサイクル・マネジメント

製品名 価格
IBM Rational Rhapsody Design Manager V3.0 25万7400円〜
IBM Rational Software Architect Design Manager V3.0 25万7400円〜
表2 コラボレーティブ・デザイン・マネジメント

 なお、同社は今回の新製品に関し、「2011年中、新規にCLM案件20件を立ち上げ、新規パートナー5社を獲得」(渡辺氏)などの目標を掲げ、CLM拡販パートナーとの協業促進やビジネスパートナー向けCLM研修プログラム(集合研修およびe-learning)の実施、IBMクラウド環境にて30日間の無償トライアルの提供(2011年7月末予定)などの販売施策を推進する考えだ。

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