イスラエルの3次元プリンタメーカー Objetのヤング・エグゼクティブが3次元プリンタ業界の数年後について語った。
DMS2011開催を目前にして、イスラエルの3次元プリンタのメーカー Objet社のセールス担当副社長(VP Sales Operations) ジョナサン ジャグロム(Jonathan Jaglom)氏が来日し、同社製品の将来像について語った。
Objet社の3次元プリンタは、XY方向は600×600dpiの解像度で、Z方向は16μmの積層ピッチ(※精度は装置のクラスによる)で造形でき、かつCADデータと造形物の寸法誤差も±100μ程度であるとのこと。造形材料についても、ABSライクなものなど、リアルな樹脂に近いものを自社で独自に開発している。3次元プリンティングの解像度と造形精度、“リアルさ”については、非常に強いこだわりを持って取り組んできたとジャグロム氏は話す。
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全Objet製品が採用する「PolyJet」技術は、私たちが普段使うような紙に印字するプリンタの原理と基本的に同じである。既存のインクジェット技術を利用するメリットは非常に多いと同氏。例えば、以下が挙げられるという。
装置規模の拡大縮小については、ほかの手法ではなかなか面倒であるとジャグロム氏はいう。「Objetの製品は、数百万〜数千万円台まで、さまざまなクラスの3次元プリンタがありますが、他社で同じことをしようとすれば、用意したい機種クラスにより、さまざまな手法を寄せ集めなければならないでしょう」(ジャグロム氏)。
このように同社プリンタの規模における拡大縮小は、比較的自由自在なので、後は顧客がどう望むか次第というわけだ。
――自動車丸ごとのような、巨大な物が造形できるようにはなりますか?
ジャグロム氏:造形サイズは、ヘッドの数を増やしていけばいくらでも大きくできます。ただし、お客さまのニーズ次第、装置のコスト次第ですね。
――プリンタの筐体サイズはもっと小さくできますか?
ジャグロム氏:こちらもヘッド数を減らす、ワークやヘッドサイズを小さくすることで幾らか可能です。こちらも、お客さまの望む造形物の小ささ次第で、開発の計画をするでしょう。
――金属は造形できるようになります?
ジャグロム氏:理論的に可能です。しかし、金属を噴出する仕組みは結構複雑で、造形材料や、装置のハードウェア、ソフトウェア両面で、クリアするべき問題がまだあります。その実現がいつになるかはまだはっきりしたことが言えません。
今後、同社の顧客ニーズや、3次元製品の市場は、ここ数年のうちに劇的に変化していくだろうとジャグロム氏は見ている。Objet社は、毎年、グローバルで顧客に対して詳細な調査を行いながら、市場の広がりや動きを細やかに追いかけているそうだ。そして同社は、そこにどう追い付いていこうと考えているのだろうか。
――ジャグロム氏の考える3次元製品のこれからは?
ジャグロム氏:「3次元CAD」というと、プロフェッショナルツールを誰もが思い浮かべますが、4、5年後には、プロフェッショナルではない一般層の人が3次元モデルを容易に作れる時代がくると思います。14歳の女の子がKinectを使ってジェスチャーで3次元モデリングする様子を見たことがありますが、まさにあの世界が一般的になる時代が数年先にやってくると私は考えています。そうして、3次元モデルが世の中に増えれば、プリントしてみたいと誰もが思うでしょう。ですから、3次元プリンタのニーズも、いまより格段に増えてくると考えているのです。そうした層に広げていくときは、価格もいまより大幅に廉価にしなければなりません。Objetの仕様は自由にコントロールできるので、そういった市場ニーズを常にトラッキングしながら、適切なタイミングで、顧客の求めるスペックのプリンタを投入したいのです。
これはいつになるか分かりませんが……、例えば、高価なブランド物のサングラスを掛けていて、そこに自分の子どもがぶつかってきて、部品を破損してしまった。そんなとき、そのブランドのサイトにアクセスして、STLファイルを購入し、自宅のプリンタで出力する。そんな時代もやってくるのではないかと思います。もう既に、そういったことを考え出している人もいます。
Objet社製品を扱う商社のアルテックは、DMS2011に出展する。別会場ではPRセミナーも行う予定だ。ぜひ併せてご覧いただきたい。
そしてそこには、“あの子たち”が待っている……。宮本記者によって渋谷やお台場に連れまわされた現物が展示(記事冒頭関連記事を参照のこと:思い出アルバム(?)付き)されるので、実際に手に取ってご覧いただきたい。
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