3次元プリンタで私がフィギュア化されるまで3次元スキャニング&プリンティングの最新技術(1/3 ページ)

3次元スキャニングから造形までの過程をレポート。今回のサンプルは人間。“女子なあの人”を3次元プリンタから出力する。

» 2011年06月02日 12時00分 公開
[加藤まどみ,@IT MONOist]

 今回、3次元スキャンから3次元プリンタ出力までの一連の作業を体験する機会を得た。

 せっかくやるなら面白いものを(!?)お届けしたい、ということで、ITmedia ねとらぼの“女子なあの人”が、自らサンプルに! 彼女のフィギュアができるまでを例に、3次元スキャンや3次元プリントの手順、技術について詳しく紹介していく。

 アルテック社、データ・デザイン社の協力の下、アルテック 東陽町テクニカルセンターにて、その一連のデモを実施した。

女子なあの人?

 ひとまず、“あの人”がいったい誰なのか、気になってしまう人は、以下の記事をご覧いただきたい。

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まずは、サンプルのデモ

 まずはサンプルを例に3次元スキャンの手順を紹介。使用したスキャナはデータ・デザインが販売するArtec社製の「Artec MHT」。非接触式で、手で持ってスキャンするタイプだ。重さは1.6kgで片手で簡単に持ち上げられる。

開始 スキャンを開始

 これでサンプルの周りをすっとなでるようにスキャンしていく。するとスキャナをつないだPC上にサンプルの輪郭が映し出される。

スキャニング 画面に表示されたスキャニングデータ:まるで仏さまが異次元空間から召喚されているように見える(多分、願いごとは聞いてくれない)

 画面にきちんと映っていることを確認したら、トリガーを押してスキャンを開始する。サンプルの形状が点の集まりとして記録されていく。対象物とスキャナの距離は0.4mから1mの間に収めるようにするとのことだ。

 ちなみに3次元スキャナの仕組みは次のようになる。対象物に白色光の格子パターンを投影、対象物の表面で格子の形が変形する様子をカメラで読み取ることで、3次元形状を記録する。1秒間に15フレーム撮影しており、スキャナを動かすたびに直前に読み取った画像と重ね合わせ、ソフトウェア上で3次元画像を形成していく仕組みだ。ある程度速く動かしてもきちんと像を撮れていた。レーザー方式ではないため、マーカーは必要ない。人間や動物はもちろん、さまざまな有機物、食品などマーカーを付けにくい物などにも使える。

 前面を撮った後は、いったんスキャンを止めて、サンプルを後ろに向けてから背面をスキャン。別々に撮ったデータはあとで合成することができる。ソフトウェアの画面上で2つのデータを表示させ、共通の点を3点以上選択すると、自動でデータが重ね合わされる。「ハンディタイプなので後ろ側に回って撮れるとはいえ、実際は部屋が狭かったり設備のすき間に入る必要があったりと、一度にスキャンすることが難しいことも。あとでソフトウェア上でデータを合成できるので、こういった問題を解決できる」(データ・デザイン 営業部 熊谷俊男氏)。

 データを撮り終わった後、重なりすぎた点は間引き、データの容量を調節する。また机や壁など余分に映った部分を選択してカット。これはペイントツールのように枠で囲んでカットしたり、消しゴムツールで消したりする簡単な作業だった。続いて3次元プリンタの入力形式であるSTLデータに変換。ワンクリックするだけで数秒で完了した。

写真のテクスチャを張る

 こうして出来上がったデータには色情報はない。しかしカラーのテクスチャを張り付けることもできる。スキャンと同時にカラー写真も撮影しているためだ。必要なタイミングをカメラが判断して自動で撮影しているという。これも出来上がったサンプルにボタン1つで張り付けることができた(以下の写真)。

テクスチャサンプル テクスチャが張られたデータ

 ちなみに掛かった時間は、撮影だけで1分程度、撮影からカラーのサンプルを作成するまで全てで説明しながらでも5分程度だった。「マーカーもいらず素早く撮れるため、数をこなしたい場合はとくに便利」(熊谷氏)とのことだ。

 データの取り込み、加工をしたのは、いたって普通のノートPC。そのためハイスペックのPC環境を用意する必要もなさそうだ。屋外にノートPCとスキャナを持ち出して、例えば自動車のバンパーをスキャンするといったことも簡単にできるだろう。

熊谷氏熊谷氏 既に自らも3次元スキャン体験済み。データ・デザイン 営業部 熊谷俊男氏。右の作品は切削で製作
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