図3では、Man(人)を中心に、あの痛ましい大事故のインタラクションギャップを抽出してみましょう。まだ記憶に新しい「JR西日本の脱線事故」の件です。
ATSがなかったことが、技術者としては大いに悔やまれます。
東海村JOC臨海事故――覚えていますか? 日本初の原発事故です。
作業員が、裏マニュアル通りにバケツでウラン溶液を運び、一気に沈殿層へ注ぎ込んだために危機的な臨海事故を起こした大事件です。
次の図4では、Methord(方法)を中心にインタラクションギャップを抽出してみましょう。
次は、もっと難しいぞ! 図5は、福島第一原発のトラブルが想定内であることを立証するためのインタラクションギャップ(上級版)だ! どうだ、良君? インタラクションギャップを見つけられたか?
うわぁ〜〜! インタラクションギャップだらけですね!
良君? 即席でいいから、図5におけるインタラクションギャップを言ってみろ!
えーっと……。
う〜〜む! 確かにインタラクションギャップだらけだ! しかし、真の原因は、4Mの「Man」かもしれねぇなぁ。この分析からは、「天災」の文字は見つからねぇってもんよ。
この記事の執筆にあたって、気が付いたことが幾つかあります。
そして、最後にとても残念なことがあります。それは……、テレビの報道などで事故について解説する人物が各所の管理者や学者で、技術者や設計者、そして、職人が登場しないことです。
以下は、筆者の著書『ついてきなぁ! 設計トラブルつぶしに「匠の道具」を使え!』(日刊工業新聞社刊)の第1章からの抜粋です。
技術者は、
- 実力もないのに、プライドだけが高い。内弁慶である。
- 好きな仕事しかやらない。
- 会社の利益、損益を全く把握していない。
- 設計ミスで社告やリコールが発覚すると逃げまくり、謝罪しない。
とても身勝手な技術者像が、目に浮かびます。鮮明です。
あぁ、あの会社のあの人、この人、その人……、そして、反省すべきは筆者自身のような気がして、頭が上がりません。
大事故や社告・リコールが発生すると、「より一層の品質管理」「危機管理に関する一からの見直し」「事故未然防止法のFMEAの実施」という対策手段が企業や団体のお決まりのせりふとなっています。
しかし、これらは手段(≒道具、ツール)に過ぎません。
素晴らしい道具を有していても、それを使いこなす「匠のワザ」を有していないことを、「豚に真珠」「猫に小判」「宝の持ち腐れ」と言います。
技術とは学問の上に実務歴を有していなくてはなりません。実験室レベルの装置で、実験室から出てきたような専門家以外に適切な指導ができる「原子力の職人」は、この国には不在なのでしょうか?
鉄道、海運、航空、原子力……これらの危機管理に、学者ではない職人の育成がこの国に求めれられていると思います。(終わり)
・ついてきなぁ!失われた『匠のワザ』で設計トラブルを撲滅する(日刊工業新聞社刊)
・ついてきなぁ!設計トラブルつぶしに『匠の道具』を使え!(日刊工業新聞社刊)
國井 良昌(くにい よしまさ)
技術士(機械部門:機械設計/設計工学)。日本技術士会 機械部会 幹事、埼玉県技術士会 幹事。日本設計工学会 会員。横浜国立大学 大学院工学研究院 非常勤講師。首都大学東京 大学院理工学研究科 非常勤講師。
1978年、横浜国立大学 工学部 機械工学科卒業。日立および、富士ゼロックスの高速レーザプリンタの設計に従事。富士ゼロックスでは、設計プロセス改革や設計審査長も務めた。1999年より、國井技術士設計事務所として、設計コンサルタント、セミナー講師、大学非常勤講師としても活躍中。Webでは「システム工学設計法講座」を公開。著書に「ついてきなぁ!加工知識と設計見積り力で『即戦力』」(日刊工業新聞社)と「ついてきなぁ! 『設計書ワザ』で勝負する技術者となれ!」(日刊工業新聞社)がある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.