そういうことからか、ユーザーが好むもう少し落ち着いた色を選んだ方がいいのではないかという意見が挙がった。それにランバ・ラルは、ひげを蓄えたおじさまキャラ。そのイメージもあるだろう。そういうわけで、もう少し落ち着いた色を選定しようということになった。
結果的には、ランバ・ラルモデルは濃紺基調の色になった。アニメキャラクターモチーフの製品は、「とにかく、アニメに忠実にすればいい」わけではないことがうかがえる。
一方、赤いシャア・アズナブルのモデルは、デザイン面の決定ではあまり苦労はなく、試作の色出しの方に苦労したという。
A社にデザイン案を提示すると、数種の色見本を出してくれる。
それをキングジムの担当が確認し、「この色で」と指示を出す。しかし、実際に成形されてくると、思った色の感じと違うことが結構あった。シャア・アズナブルモデルの赤もしかり。
最初の試作品は、赤みの強く明るい色で仕上がってきたという。次に、色を修正してもらったところ、少し色は濃くなったが、赤みの強さが残る……。ほんの少し渋くて濃い色にできないか。感覚だけで伝え、物を作り、確認し、フィードバックして……を着々と繰り返した。
ガンダムポメラにおけるハードウェアの構造はDM10(ソフトウェアはDM20が基本)と変わらない。しかし今回のモデルは、外装パネルが凝った形状をしており、キーボードのキーや筐体がキャラごとに色分けされている。色分けばかりでなく、注意シール、液晶に組み込まれたプログラムが、キャラ独自のものになっている。
そこでDM11G(ガンダムポメラ)は、他シリーズの生産ラインとは完全に独立させた。さらに、色別にラインを分けた。実際は、流用部品が大半だが、それらも色ごとに独立した品番を持たせた。生産に携わる中国のスタッフたちが部品をピッキングする際に混乱しないようにするためだ。
その代わり、部品管理面などではやや非効率になる。しかし、DM11Gについては、数量限定モデルであり、長期生産するわけではないので、これでよしとしたとのことだ。
ガンダムポメラの開発コードネームは、「チベ」。開発コードネームの命名者は尾花氏。チベは、ガンダム放映中でも数回しか出てこなかった単語だ。正式名称は「チベ級重巡洋艦」でジオン軍の母艦。
「作品中で、ガンダムにやられまくる戦艦の名前」という尾花氏に、「えっ、そんなにやられまくっていないでしょう、ジオンの誇る旗艦ですよ?」と立石氏。そこからチベの歴史(古い戦艦が改造されたという設定、など)について語り出そうとするお二方だったが、これは長くなりそうだと踏んだのか、自ら中断……。
立石氏いわく、「とにかく、ガンダム好きにしか分からないコードネームにしたかった。誰でも知っている『ザク』などは避けたいと思いました」とのことだ。コードネームから、製品のこだわり、とんがり感を出していたというわけだ。ちなみに、ほかの候補としては、「コムサイ」「アッザム」などが挙がっていた。
尾花氏は開発中、調査の一環でガンダム関連のサイトを次々に見て回る自分を見た社内の人たちが、「尾花は、何を遊んでいるんだ」と思っているのではないかと心配になったという。
趣味と重なったこともあり、モチベーションは高まって、素直に「楽しい仕事だった」と尾花氏はいう。しかし通常のポメラと比較すれば、ガンダムポメラは設計・製造の技術的課題の難易度が格段に上がった。厳しい技術課題を難なくクリアできた要因には、日中開発チームの非常に高いモチベーションが確実にあった。
モチベーションを侮るなかれ。
現在、次モデルの企画も進めているという。重視しているのは、持ち歩きやすさと入力しやすさ。現在のDM10やDM20と比べ、より軽く、持ち運びしやすいサイズになるよう検討しているとのことだ。
「ネット上のユーザー意見の大半は網羅され(改善され)ると思います」と立石氏はいう。しかし、あくまでデジタルメモ。パソコンになることは、くれぐれもないとのことだ。「あえて言おう! メモであると!」――ガンダムポメラの注意書きの中でギレン・ザビがほえるセリフは、キングジムの思いの表れか。
今後のポメラ開発チームの動きにも要注目だ。
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