今回はデザインファイナル5校の車両設計のポイント、デザイン審査委員長の小野氏のコメントなど紹介
年に1回、学生の有志たちが協力し合い製作した自動車を静岡県袋井市のエコパに持ち込み、モノづくりの総合力を競い合う「全日本 学生フォーミュラ大会」(自動車技術会主催)。今回は、本大会の優等生ともいえる、デザインファイナル5校の車両設計のポイント、デザイン審査委員長の小野 昌朗氏(東京アールアンドデー 代表取締役社長)のコメントなど紹介していく。
デザイン審査は、全日本学生フォーミュラ大会において、合計1000点中150点が割り当てられる重要なイベントだ。その審査の上位5チームが、最終日に開催する「デザインファイナル」でプレゼンテーションを行うのがこの大会の恒例となっている。また、その結果を踏まえて総合順位が決定される。
大会結果に関するニュース(MONOist): | |
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⇒ | 第8回 学生フォーミュラ大会開催――優勝は阪大 − @IT MONOist |
今年度は、「クルマが早く走るためには、なにが必要なのか」――そこに立ち戻り、基本性能を向上させることに主眼を置き設計をしたという上智大学。同校の昨年度車両のカーボンモノコック(初採用)の重量は24kgだったが、今年度車両では16kgと約34.2%の軽量化に成功。昨年度のモノコックはすべてを均一積層構造としていたが、今年は部分的に――特にサスペンションの入力点などに――追加積層をし、剛性がそれほど必要のない部分や、過度な剛性を持っていた部分については積層を減らした。剛性も、実験により昨年度車両と同等と判断したとのことだ。
カーボンホイールは今年度のマシン開発コンセプトである軽量化・高剛性を目指し、採用したとのこと。マグネシウム製では1個当たり4kgのところ、カーボン製なら1個当たり2.2kgで済み、かつ剛性もアップできたという。カーボンホイールは、カーボンを16層積層して製作したが、エア漏れが起こりやすく補強方法に苦労したとのことだ。
同校は昨年度車両よりスーパーチャージャを搭載している。昨年度はスーパーチャージャで過給する際に起こる吸入吸気の温度上昇をサブインジェクションで抑えていた。しかしエンジンの低回転域で冷却効果が良好ではなく、レスポンスに問題が出てきたとのこと。今年度車両はインタークーラーでの冷却を採用。またカムプロフィールやバルブタイミングの再検討、インジェクタ(給水装置)の再選定をしたことで、エンジンが低回転から高回転域まで高トルクを持っているような特性を実現した。
2008年度はリアに大きなウィングが付いていて、2009年度にはありませんでしたね。しかし今年はウィングがまた付いています。このあたりの事情は?
去年は、ウィングを搭載しなくてもスタビリティファクタの観点でアンダーステア傾向だったこと、また車両重量で不利となることから、搭載を見送りました。今年度車両は、中高速コーナーの入り口でオーバーステア傾向が強くなってしまい、ウィングの搭載を検討しました。搭載した結果、実際にドライバーのフィーリングも大変良くなり、アンダーステア傾向に近づきました。
スタビリティファクタ:ステアリング(操舵性)の安定性や傾向を見るための指標。
ほかのチームは、小型化というコンセプトが多いですね。上智はその点、車両はちょっと大きめで、その中で目立つ感じがします。
既定のテンプレート(『95% male』 を乗せる)をクリアしていたとしても、オーバーハング(車軸中心からボディの端までの距離。ここではフロント側)が短過ぎれば、ドライバーの脚や姿勢がきゅう屈になってしまうため、この設計(サイズ)としています。
95% male:第6回大会からルール内で成人女性5%、成人男性95%までに適合すること("Car should be designed for people from 5th%female to 95th%male")を規定とした。規定集内に掲載されている95%の男子のテンプレートが最低条件で、チームのすべてのドライバー(テンプレートより背の高い人も太っている人も)も満たすことが条件である。
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