「最先端の高級車はECUを100個以上搭載」――ベクター・ジャパンが早稲田大学で講義

» 2010年10月29日 00時00分 公開
[Automotive Electronics]

 ベクター・ジャパンは2010年10月、早稲田大学大学院の環境・エネルギー研究科で同年9月に開講した同社の寄附講座「環境電気・機械システム論」において講義を行った。

 今回の講義では、同社の副社長で技術部門を統括する早坂正義氏(写真1)が、カーエレクトロニクスと車載ネットワークの進化について解説した。早坂氏は、「1900年初頭の自動車に搭載されていた電子システムは点火コイルだけだった。その後60年間の自動車の進化は、機械技術が支えたものであって、電子技術の貢献は非常に小さいものだった。カーエレクトロニクスが自動車の進化をけん引するようになったのは1970年以降のことだ。1970年代前半に起きた、米国カリフォルニア州の排気ガス規正法『マスキー法』(1970年)と石油ショック(1973年)、そしてマイコンの発明(1971年)という技術イノベーションによって、エンジンの燃料燃焼をデジタル制御するための技術開発が急速に進展し始めた」と語る。


写真1 ベクター・ジャパンの早坂正義氏 写真1 ベクター・ジャパンの早坂正義氏 

 こうしてカーエレクトロニクスの進化が始まり、現在では普及価格帯の乗用車の車両コストの30〜40%を電子システムが占めるようになった。さらに、電気自動車やハイブリッド車の場合には、電子システムのコスト比率は50%以上に達する。また、車両に搭載されるECU(電子制御ユニット)の数も、「1980年ごろは片手で数えられる程度だったが、最新の欧州メーカーの高級車であれば100個を超えるようになった」(早坂氏)という。そして、それらのECUに用いられる車載ソフトウエアの規模も増えている。C言語によるプログラムの行数で換算すると、1台の車両に用いられる車載ソフトウエアの規模は、2000年に200万行弱、2005年に約350万行に達し、「アポロ宇宙船のソフトウエアの規模を超えた」(同氏)。そして、2010年には600万行に達する見込みである。

 このように、ECUの搭載数やソフトウエア規模が増大するのに対して、ECU間を接続する車載ネットワーク技術も進化している。早坂氏は、「車載ネットワークが本格的に利用されるようになったのは1990年代から。当初は、ワイヤーハーネスを簡素化することが目的で、複数のECUを連動させるようなことはほぼ行っていなかった。しかし、車載LAN規格としてCAN(Controller Area Network)がデファクトスタンダード化した2000年ごろから、ECU間でセンサーの信号を交換するようになり、2005年からは複数のECUで機能を共有する小規模の協調制御なども行われるようになってきた。最近では、車載ネットワークを介して車両全体を統合制御する技術も登場している。今後は、車両の外部と連携するインフラ協調も行われるようになるだろう」と述べている。

(朴 尚洙)

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