競合他社の戦略を読み解くパテントマップ〜知的財産権情報の分析とビジュアル化自社事業を強化する! 知財マネジメントの基礎知識(5)(3/4 ページ)

» 2010年06月04日 00時00分 公開
[野崎篤志/ランドンIP,@IT MONOist]

特許公報の内容分析でさらに詳細情報を入手する

講師

これまで例示してきたのは統計解析型マップです。つまり特許公報の内容を読み込まないでも、書誌的事項を利用して統計処理することで作成することができます。これに対して特許公報の内容を読み込まないと作成が難しいのが内容解析マップです。代表的なのは技術変遷マップ構成部位マップの2つです。

技術変遷マップ(技術発展マップとも呼ぶ)は、ある特定の技術分野の特許を出願年・公開年・登録年などに沿って並べ、ある特定技術の発展の流れを示したマップです。特許公報の内容を読み込んでいって、特許同士の相互の技術的なつながりを見いだしていきマップ化します。なお内容を読み込まなくても、特許同士の引用・被引用関係を利用する場合もあります。


図4 技術変遷マップ 図4 技術変遷マップ(特許出願技術動向調査:太陽電池より)
講師

このマップは特許庁が発表している特許出願技術動向調査“太陽電池”(PDF)に掲載されているものです。シリコン系太陽電池の基本特許・重要特許の技術変遷図で、理解しやすくするためにマップの下部にトピックスを掲載しています。

図5 引用・被引用マップ 図5 引用・被引用マップ(特許流通支援チャート:ラピッドプロトタイピング技術より)
講師

もう1つ構成部位マップは、個別の構成要素の組み合わせであるシステムにおいて、個々の構成要素についてどれくらいの出願件数があるか示したマップです。例えば、ある技術に着目して構成部位マップを作成すると、その技術においてどの構成要素について出願が集中的しているか把握することができます。

図6 構成部位マップ 図6 構成部位マップ(特許流通支援チャート:CGアニメーション技術より)
講師

例に挙げたCGアニメーション技術の構成部位マップでは、“モデル作成合成技術”“動作表現技術”“ハードウェア関連技術”の3技術に大別して、さらに個別技術ごとに展開して件数・代表特許を例示しています。

特許情報から競合他社の研究開発体制が分かる!?

チザイさん

質問があります。セミナーの冒頭の方で先生が「競合他社の研究開発体制を把握できる」という趣旨のことをおっしゃっていたと思うのですが、どういった分析手法があるのでしょうか?

講師

そうですね。研究開発体制の分析については、これまでの例に含まれていませんでした。以下のマップを見てください。これは発明者相関分析システムICORASというシステムで分析した結果を可視化したものです(注)。

円1つ1つが発明者を表していて、円の大きさがその発明者の累積出願件数です。発明者同士は一緒にグループで研究開発に当たりますので、特許にも共同発明者として記載されます。その共同発明関係を線で結んでいます。この発明者ネットワークマップにより、どの発明者がキーマンか、どれくらいの研究開発人員を投入しているかを把握することができます。

図7-1 発明者ネットワークマップ(富士電機) 図7-1 発明者ネットワークマップ(富士電機)
図7-2 発明者ネットワークマップ(東芝) 図7-2 発明者ネットワークマップ(東芝)

注:燃料電池関連特許についての筆者の分析結果


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