設計サバイバル「道具」とは何か、もう一度、復習してみましょう。第2回では、樹脂部品を設計するうえで必要な「設計サバイバル術」として、「断面急変」の基本的な「知恵」と、Rの設置などの「大道具」を伝授しました。
しかし、設計を「知恵」と「大道具」だけで遂行するには、あまりにも大ざっぱ過ぎます。「機械設計の料理本」を目指すこの連載のコンセプトからすれば、もう少しの気遣い、そして、設計者としてのプライドでもある「設計センス」を盛り込みたいところです。
そして今回では、表1に示すように、樹脂部品設計における「さまざまな小道具」と称する設計サバイバル術を伝授します。これにより、樹脂部品の低コスト化と最適設計が実現できます。
トホホ、あのお店、当分の間出入り禁止になっちゃた……。気に入ってたのになぁ。しかし、甚さん、ちゃんと起きてるかな?
さて甚さんの大無礼講祭から一夜明けた朝、いつものように良君が根川製作所の事務所にやって来ました。良君の心配は、どうやら無用だったようです。
甚さん、今日はすがすがしい朝を迎えたようですね。
そうさ、昨夜はぐっすり眠ちまったからなぁ。ところで、オレ、なんかやらかしたか? よく覚えていねぇーんだなぁ。日本人技術者に『真の技術者魂』が戻ってほしいとか、ナントカ、そんな話をしていたと思うんだが。あん?
覚えてないのか……。
それでは、ここからさらに深く実務レベルに入っていきましょう。まず、樹脂部品類の中でも特に多いのが外装部品です。身近な商品では、電卓、薄型テレビ、エアコン、インクジェットプリンタなどの外装カバーです。以降は、回路基板を収納する箱、つまり、樹脂製シールドボックスを取り上げましょう。シールドボックスとは、妨害電波を受けない、または、妨害電波を外に発しない、その電波を「シールド(Shield)」する役目の箱です。
身の回りのシールドボックスとしては、ノートパソコン用の外装カバーやテレビゲーム機の外装カバーが筐体(きょうたい)、および、シールドボックスの役割の一部を成しています。
樹脂製シールドボックスといっても、単なる樹脂の箱。皆さんは、図2に示すシールドボックスが頭の中に浮ぶのではないかと思います。
頭の中に浮んだら、設計サバイバル術の「小道具」を組み合せていきます。図3が、その組み合せの一例です。ここでは樹脂箱に、「底抜き」の設計サバイバル小道具を組み合わせ、基板取り付け部を設計します。
出典:ついてきなぁ!加工部品設計で3次元CADのプロとなる!(日刊工業新聞社刊)
そして、図4のようにシールドボックスとして具現化しました。本体取り付け部には、三角リブを付けます。
出典:ついてきなぁ!加工部品設計で3次元CADのプロとなる!(日刊工業新聞社刊)
基板取り付け部は、下底を抜いた方が製造しやすいんだよ。
これで一気にベテラン設計者へ近づくことができたでしょう。ひとまず、なんとなく、「格好いい!」と思っていただければ幸いです。
『頭の中に浮んだら、設計サバイバル術の小道具を組み合せていきます』……この言葉、とても斬新(ざんしん)ですねぇ。
そうだ、良君! 後で説明すんけど、“設計”とは組み合わせの技術だ。よく覚えとけ! これは、命令だぜぃ!
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